| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S11-2  (Presentation in Symposium)

日本産アリ類の分類研究が、外来種同定やその市民監視体制に果たす役割
Role of taxonomic studies of Japanese ants for the identification of alien species and the associated citizen-based monitoring system

*吉村正志(OIST)
*Masashi Yoshimura(OIST)

 日本中を騒がせたヒアリ。一般の人たちにとって、普段気にもとめていないアリの中の1種類が、突然に注目をあびて社会を大きく揺るがした。しかし、この事案、確かに突然の出来事に見えるが、実際に「その生物」を発見してから、それが「ヒアリである」とすばやく同定できる人材が、日本には備わっていたことを見落としてはならない。アリに限っても、ヒアリやアカカミアリ、その調査過程で新たに発見されたハヤトゲフシアリなど、メディアを通して一般に認知されるときには、すでに種名や和名、それに紐付いた形態的特徴、生態的特徴、あるいはその危険性や被害事例までもが準備されている。しかし、これは決して容易なことではない。既知種だけでも世界で13000種をこえるアリ類の中から、特定の一種を同定し、その種が他の生物や人の社会に及ぼす影響を、過去の事例や現地観察から予想しなければならないのだ。
 本講演では、日本産アリ類の分類研究が、外来アリ対策という現実の社会で直面する課題に果たす役割について考える。


日本生態学会