| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W06-2  (Workshop)

農地周辺の景観を考慮したアライグマによる広域的な両生類個体群への影響評価
Impact of invasive raccoon on native amphibian population in agricultural landscape

*栗山武夫(兵庫県立大学)
*Takeo Kuriyama(Univ. of Hyogo)

本研究ではアライグマの捕食により最も影響を受けているグループの一つであるカエル類に注目し、兵庫県の広域スケールでアライグマが負の影響を与えるか明らかにした。兵庫県では1990年代頃からアライグマの生息が確認され、その後分布が拡大したことによって、アライグマの定着年数には地理的な勾配がある。定着年数の異なる調査地を選定し、カエル類への影響を評価した。対象としたのはカウント調査の容易な卵塊を産み、水田付近に生息するニホンアカガエルと、樹上性で水田周辺部に生息するモリアオガエルの2種である。ニホンアカガエルの卵塊数は2017年と2018年2-3月に55谷津で、各谷津の3-14枚の水田あるいは放棄田内でカウントした。モリアオガエルの卵塊は2017年7月と2018年6月に66谷津で農水用の貯水池、水田あるいは放棄田内でカウントした。説明変数として用いたアライグマの効果の指標は、2003年度から2017年度の15年間における兵庫県内の約4000の農業集落を対象にした鳥獣害アンケートの回答から、生息情報が得られた年数である。また、カエル類は水田の農地整備が行われると生息数が減少することが報告されているため、圃場整備に関する変数を組み込んだ。その他の説明変数としてニホンアカガエルでは潅水率と水深、モリアオガエルは調査地から100mバッファ内の森林率を用いた。卵塊が確認できなかった地点が多かったため、ゼロ過剰ポアソンモデルで解析したところ、ニホンアカガエルの卵塊数にはアライグマ生息情報年数が負の、潅水率が正の効果が、モリアオガエルにはアライグマ生息情報年数が負の効果が検出された。解析の結果2種ともアライグマ生息情報年数が大きいほど卵塊数が少ないことが分かり、広域スケールでアライグマからカエル類へ負の影響が示唆された。


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