| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-02  (Oral presentation)

ギンメッキゴミグモのメスはなぜ交尾器破壊を受け入れるのか?
Why do female spiders accept genital mutilation in Cyclosa argenteoalba ?

*中田兼介(京都女子大学), 繁宮悠介(長崎総合科学大学)
*Kensuke NAKATA(Kyoto Women's Univ.), Yusuke SHIGEMIYA(Nagasaki Inst. Appl. Sci.)

ギンメッキゴミグモではメスの交尾器が配偶行動時にオスによって破壊され、メスは再交尾能力を失う(オスにとって父性確保の利益がある)。なぜメスは、生涯で1オスとしか配偶できなくなる交尾器破壊への対抗進化を起さないのだろうか?1つの仮説は、複数オスとの交尾から得られる利益がない、もしくは少ないことである。これを検討するために、1)配偶相手および精子受け渡しの数が産卵数・孵化子グモ数に与える影響、2)メスが複数オスと出会う機会がどの程度あるか、の2つから対抗進化の利益がどの程度か推定を試みた。
1)では、交尾器破壊が一回の交尾で二回起きる精子の受け渡しの後に生じる事を利用し、一回目の受け渡し後にオスを交換し、新たなオスと交尾させることで2オスと交尾したメスを作り、飼育し産卵数・孵化子グモ数を計測した。2)では、自然状態を模して1-2mの間隔で5個体の処女メスを造網させた開放空間に、オスを一個体放逐し、1週間後にメスの交尾器の状態を観察することで行った(オスが処女メスの網に侵入するとほぼ確実に交尾が起りその9割でメスの交尾器が破壊されることから遭遇の有無を判断できる)。
その結果、2オスから3回精子を受け渡されたメスの孵化子グモ数は、1オスないし2オスから2回精子を受け渡されたメスよりも約10%多かった。一方、2)の実験設定では、オスは平均2.26個体のメスと遭遇したと推定された。遭遇頻度の個体間のばらつきを考慮すると、この結果は複数のオスと交尾する機会を持つメスの割合が全体の約2/3であることを意味する。孵化子グモ数が交尾相手の数が増えるごとに10%ずつ増えるなら、複数オスと交尾する能力を保持することで得られる利益は交尾器破壊を受け入れるときと比べて17%程度増え、交尾相手の数が増えても子グモの増加が10%で頭打ちになるなら、利益は7%程度になると推測された。


日本生態学会