| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-12  (Oral presentation)

カニのエラに住むエビヤドリムシ類の寄生生態
Parasitic ecology of the bopyrid isopods living in the branchial chamber of host brachyuran crabs

*伊谷行(高知大学), コラルジョネル(高知大学), 邉見由美(京都大学, 高知大学)
*Gyo ITANI(Kochi Univ.), Jonel Mangente CORRAL(Kochi Univ.), Yumi HENMI(Kyoto Univ., Kochi Univ.)

 エビヤドリムシ科の等脚目甲殻類は、エビ・カニ・ヤドカリなど十脚目甲殻類の鰓室や腹部に寄生する。宿主個体の成長や繁殖を抑制するため、宿主個体群に多大な影響を与えると考えられ、生態学的、水産学的に注目されている。これまで、エビヤドリムシ類の生態や生活史に関する知見の多くは、コエビ下目の宿主に寄生するBopyrinae亜科のエビヤドリムシで研究された知見に基づいている。そのため、本研究では、系統も生態も異なるカニ下目を宿主とするKeponinae亜科に属するエビヤドリムシでその生態や生活史の知見を明らかにすることにより、エビヤドリムシ類の生態学的特性の一般性を検討することを目的とした。研究対象は、ヒライソガニGaetice depressus の鰓室に寄生するヒライソガニエラムシMegacepon goeticiである。和歌山県広川ビーチで季節毎採集を行うことにより、エビヤドリムシの生活史と宿主に与える影響を明らかにした。その結果、エビヤドリムシの影響により宿主の2次性徴や繁殖が抑制されていることが明らかになり、これは、従来の知見と一致した。また、宿主と寄生者のサイズに有意な相関が認められたものの、大型の宿主に小型の寄生者が見られることもあった。これは、着底後間もない宿主にエビヤドリムシ類が寄生を開始するという従来の知見とは異なる結果である。その理由として、エビ類は鰓室のクリーニングを歩脚を用いて行うことができ、エビヤドリムシの着底を抑止できるのに対し、カニ類はそれができないためであると考えられる。


日本生態学会