| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) C02-01  (Oral presentation)

種子島と台湾から得られたイットウダイ属の未同定個体の正体は?
Unidentified specimens of the genus Sargocentron (Holocentridae: Beryciformes: Teleostei) from Japan and Taiwan

*畑晴陵(国科博分子センター), 長太伸章(国科博分子センター), 蛭田眞平(国科博分子センター), 小枝圭太(黒潮生物研), 本村浩之(鹿大総博)
*Harutaka HATA(Natl. Mus. Nat. Sci.), Nobuaki NAGATA(Natl. Mus. Nat. Sci.), Shimpei HIRUTA(Natl. Mus. Nat. Sci.), Keita KOEDA(Kuroshio Biol. Res. Fdn.), Hiroyuki MOTOMURA(KAUM)

琉球列島広域から得られたキンメダイ目イットウダイ科魚類132個体を対象に,COI遺伝子655bpのDNAバーコーディング配列の解析を行った.国際的DNAデータベースに登録されているイットウダイ科魚類の登録配列とこれらの塩基配列を比較した結果,すでに分布記録のある2属16種が見いだされた.多くの個体の塩基配列は既知の種のそれに一致またはきわめて近似した.しかし大隅諸島種子島と台湾南部から得られた2個体は,分布から近縁であると予想されたインド・太平洋産の既報告種ではなく,ハワイ諸島とその近接するジョンストン環礁に固有のSargocentron xantherythrumとクレードを形成した.これら2個体は形態的にも上記の種や,その姉妹種でインド・太平洋に分布するS. ittodaiテリエビスと酷似するが,鰓蓋上部の棘の長さが異なるほか,背鰭棘部の色彩でS. xantherythrumと,臀鰭の棘の長さでテリエビスと異なる.これまでにこれら2個体の形態と一致する種や種内変異は国内からは報告されておらず,また,イットウダイ科全種を検討しても一致する種はみられなかった.本発表ではこれら2個体について分類学的な位置づけおよび未記載種である可能性について議論する.


日本生態学会