| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-04  (Oral presentation)

人口減少の進む佐渡島におけるトキの再導入個体群の将来予測 【B】
Future projection of reintroduced population of crested ibis and declining human population on Sado Island 【B】

*永田尚志(新潟大学), 中津弘(新潟大学), 油田照秋(山階鳥類研究所)
*Hisashi NAGATA(Niigata University), Hiromu NAKATSU(Niigata University), Teruaki YUTA(Yamashina Inst. Ornith.)

  現在、佐渡島におけるトキの再導入個体群は指数的増加を示していて、密度効果からトキの環境収容力を解析的に推定できないため、トキの営巣分布拡大をもとに営巣ハビタットモデルを作成し生息可能個体数は1,360羽であると推定した。一方、佐渡島の人口は2008年に6.2万人であったが、2018年には5.4万人に減少していて、2045年までには2.5万人まで減少することが予測されている。人口減少に伴い耕作水田面積も2008年当時の5,913haから2018年には4,988haにまで減少している。今後、個体数がどのように減少するか、サブメッシュの平均勾配からサブメッシュですべての農耕地が放棄されると仮定して、営巣ハビタットモデルにより営巣数を推定した。平均勾配15度以上の急傾斜地のみの耕作放棄であれば、生息可能個体数の減少率は6.5%にすぎないが、平均勾配10度以上の中傾斜地以上の放棄で15.6%減少し、平均勾配5度以上の緩傾斜地から急傾斜地までのすべての耕作地が放棄されれば佐渡島に生息可能な個体数は現在より24.6%が減少し、生息可能個体数は1,024羽となると推定された。この結果をもとに、トキの個体群を将来にわたって維持するにはどのようにすべきか議論する。なお、本研究は環境研究総合推進費4-1606課題の研究成果の一部である。


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