| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) F02-10  (Oral presentation)

半自然草原の植物種多様性に対する歴史的な土地利用の影響
Effect of historical land use on plant species diversity in semi-natural grasslands

*野田顕(東邦大学), 山ノ内崇志(東邦大学, 福島大学), 小林翔(東邦大学), 西廣淳(東邦大学, 国立環境研究所)
*Akira NODA(Toho Univ.), Takashi YAMANOUCHI(Toho Univ., Fukushima Univ.), Kakeru KOBAYASHI(Toho Univ.), Jun NISHIHIRO(Toho Univ., NIES)

日本の草原は都市化や樹林化により減少しており、残存している場所でも植物種多様性が低下している。本研究は、草原の植物の保全に資する研究として、千葉県北部を対象に、明治初期から現代までの草原の変遷を把握するとともに、草原に生育する植物の種多様性に影響する要因を明らかにすることを目的とした。

国土地理院1/25000地形図における「白井」「小林」の範囲を対象に、明治期から現在までの複数の地図と文献を活用し、土地利用の変化を整理した。また2014年に対象範囲内の36か所の草原で植物相調査を行い、在来草原性植物種(Specialist)、その他の在来植物種(Generalist)、外来植物種(Alien)の種数に対する、局所的要因(草原面積や草刈りの有無)、空間的要因(隣接環境や近隣の草原面積)、時間的要因(農地や宅地として開発されなかった期間の長さ)の影響を解析した。また10地点以上出現した23種のSpecialistの在・不在に対する影響も検討した。

2000年代に残存する1,229haの草原の半数は過去20年以内に新たに創出されていた。一方、約25%(316ha)は過去120年以上の間で農地や宅地への土地利用の変化は見られない、草原としての歴史が長いことが明らかになった。Specialistの種数に対して、面積、草刈りの実施、草原としての歴史が長いことの重要性が示された。Generalistは、面積と草刈りの実施、生育地周辺の草原面積が影響することが示唆された。Alienは面積と生育地が農地や宅地と隣接することが正の効果を持っていた。23種のSpecialistうち12種は、草原の歴史の長さと有意な正の効果が示唆された。本研究の結果は、優先的に保全する場所の選定や、管理の再開により種多様性が回復できる場所を予測する上で有用である。


日本生態学会