| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-01  (Oral presentation)

森林帯ー高山帯エコトーンにおける花形質と媒花タイプの関連性
Relationship between floral traits and pollination type of plant communities along the forest-alpine ecotone

*水永優紀(様似町地域おこし), 工藤岳(北海道大学)
*Yuki MIZUNAGA(Samani town cooperator), Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

多くの虫媒花植物の花形質は、花粉媒介者との相互作用によって進化したと考えられている。山岳生態系の森林帯−高山帯エコトーンでは、植物群集の種組成や訪花性昆虫群集の構成が、標高やハビタット間で変化する。したがって、群集スケールでの花形質もまた標高とハビタット間で変化する可能性がある。しかし、花粉媒介者の構成の標高傾度での変化と関連させた、群集スケールでの花形質の変化の傾向を調べた研究はとても少ない。本研究では、森林帯−高山帯エコトーンにおける植物群集の花形質の傾向を、媒花タイプと関連づけて明らかにすることを目的とした。

北海道大雪山旭岳の標高1100−1600mの登山道約3.4 kmにおいて、虫媒花植物の形態形質(花冠幅、花冠長、花序の高さ)と花色と開花量を測定した。各植物種は、訪花性昆虫の観察記録に基づいて、媒花タイプ(ハチ媒花、ハエ媒花、ハチ・ハエ混合媒花、その他)に分類した。花色は、花弁の反射スペクトルを測定し、ハナバチの色覚モデルとハエの色覚モデルで二次元座標に数値化した。その配列パターンに基づいて、ハチ選好性花色種、ハエ選好性花色種、その他の3タイプに分類した。

いずれの花形質も標高やハビタット間では顕著な違いは見られなかったが、媒花タイプ間では明瞭な違いが認められた。ハチ媒花は花冠長が長く、ハチが好む青色系の花色が多かった。ハエ媒花とハチ・ハエ混合媒花は花冠幅が大きく、ハエが好む白・黄色系の花色が多かった。ハエ選好性花色種は、ハチ選好性花色種に比べて花冠幅が大きく、開花密度が高いことが示された。群集スケールで標高傾度に沿った花形質の違いが見られなかったのは、どの標高域でもハエ類とハチ類が優占しているために、群集スケールでは明瞭な花形質の推移が起きていないと考えられた。


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