| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-05  (Oral presentation)

ブナにおける誘導反応の伝達経路 揮発性化学物質はCueになるのか?
Signaling pathway of induced response in Fagus crenata<br clear="all" />-Are volatile cues required in intra-inter signaling? -

*萩原幹花(龍谷大学・院・農), 塩尻かおり(龍谷大学・院・農), 石原正恵(京都大・フィールド研), 日浦勉(北大・フィールド科学)
*Tomika HAGIWARA(Ryukoku Univ.), Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ.), Masae ISHIHARA(Kyouto Univ.), Tsutomu HIURA(Hokkaidou Univ.)

植物は昆虫などから被害を受けると揮発性化学物質(Volatile Organic Compounds : VOCs)を放出する。被害を受けた個体はVOCsを放出し、VOCsを受容した健全な隣接個体が誘導防衛を開始する。これは、VOCsを介した「植物間コミュニケーション」と呼ばれ、近年注目されている。
VOCsを介した植物間コミュニケーションの実証の殆どは草本で、木本ではヤナギ他4種程度しか実証されていない。もし樹木、特に森林を優占するような種でおきているのであれば、森林生態系における生物群集構造を解き明かす、新たな視点になり得る。また、植物は局所的な被害を受けると、植物体全体の抵抗性が高まり防衛をはじめることが知られている。これは、全身誘導抵抗性(induced systemic resistance)と呼ばれており、タバコ、イネ、ポプラなど様々な植物で報告されている。全身誘導抵抗性のシグナル物質として、サリチル酸( salicylic acid: SA) やジャスモン酸( jasmonic acid : JA )などの植物ホルモンが代表的な物質であり、その情報伝達経路は体内移行性であると数多く報告されている。しかし近年、被害を受けた葉から空気中へ放出されるVOCsを介して未被害葉や植物体全体の抵抗性が誘導されることが明らかになってきた。
ブナは冷温帯林の優占種であり、これまでに局所的な食害・傷害に対し全身誘導防衛をすることが報告されている。本研究では、1)ブナ個体内のシグナル伝達経路を明らかにすることと2)ブナのVOCsを介した植物間コミュニケーションの有無を検証することを目的とし、考察する。また、ブナの葉を切除する前後でのVOCs組成も合わせて考察する。


日本生態学会