| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-03  (Oral presentation)

過去の土壌改変が半自然草原植生に与える影響:蒜山地域の例
Effects of past soil modification on semi-natural grassland vegetation: A case study of Hiruzen Region, Japan.

*横川昌史(大阪市立自然史博物館), 増井太樹(真庭市役所), 堤道生(西日本農研センター), 平舘俊太郎(九州大学 農学研究院)
*Masashi YOKOGAWA(Osaka Mus. of Nat. Hist.), Taiki MASUI(Maniwa City), Michio TSUTSUMI(NARO), Shuntaro HIRADATE(Kyushu Univ.)

 岡山県真庭市の蒜山地域において、過去の土壌改変が行われた場所と行われなかった場所の植生と土壌化学性を比較することで、過去の土壌改変が半自然草原の与える影響を評価することを試みた。過去の空中写真や土地管理者への聞き取りなどによって、過去に畑地などへの土地利用転換があった半自然草原を蒜山地域内で2ヵ所選定し、YUBとHATと名付けた。YUB、HATそれぞれにおいて、過去に土壌改変があった半自然草原(改変区)とそこに隣接する土壌改変がなかった半自然草原(非改変区)を調査地とし、それぞれにおいて、1m×1mの植生調査区を20個設置した。調査区内に出現した植物の名前、被度、高さを記録し、土壌分析を行った。
 植生調査の結果、YUBでは、改変区、非改変区ともにススキやヤマハギが優占していたが、改変区で顕著に出現種数が少なった。特に改変区ではアキノキリンソウ、ツリガネニンジン、ハバヤマボクチ、ホソバシュロソウなどを欠き、シラヤマギクやワレモコウが出現頻度を大きく低下させるなど、草原性植物の欠落が認められた。HATでは非改変区ともにススキやヤマハギ、ネザサが優占しており、出現種数に顕著な違いは見られなかった。改変区ではシラヤマギクやワレモコウが出現頻度を大きく低下させていたが、完全に欠落した草原性植物は見られなかった。土壌分析の結果からYUBとHATでは土壌の酸度が大きく異なっており、直接の比較は難しいと思われるが、それぞれの調査地における土壌環境について詳細に検討し、植物の出現パターンとの対応関係を検討したい。


日本生態学会