| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-05  (Oral presentation)

小河川におけるニホンウナギの稚魚の成長と移動 【B】
Growth and movement of Japanese eel juveniles in small rivers 【B】

鈴木邦弘(静岡県水産技術研究所), 松山創(静岡県水産技術研究所), 木南竜平(静岡県水産技術研究所), 川合範明(静岡県水産技術研究所), 佐藤孝幸(静岡県水産技術研究所), 鈴木基生(静岡県水産技術研究所), 平井一行(静岡県水産技術研究所), 増元英人(静岡県水産技術研究所), *渡邊俊(近畿大学), 塚本勝巳(東京大学)
Kunihiro SUZUKI,(Shizuoka PRIF), Hajime MATSUYAMA(Shizuoka PRIF), Ryuhei KINAMI(Shizuoka PRIF), Noriaki KAWAI(Shizuoka PRIF), Takayuki SATO(Shizuoka PRIF), Motoo SUZUKI(Shizuoka PRIF), Kazuyuki HIRAI(Shizuoka PRIF), Hideto MASUMOTO(Shizuoka PRIF), *Shun WATANABE(Kindai Univ.), Katsumi TSUKAMOTO(The Univ. of Tokyo)

 ニホンウナギ(Anguilla japonica)の河川加入後の初期生態を明らかにするため、静岡県伊東市宇佐美湾へ注ぎこむ隣接した3つの小河川(烏川、伊東仲川、伊東宮川)において、2013年5月から2015年10月までの毎月1回、エレクトリックショッカーにより本種の稚魚であるシラスウナギとクロコ(全長:200mm未満、体重5g以上)を周年、採集した。ただし、烏川は始めの1年のみの採集となった。採集後、すべての個体はただちに麻酔をかけ、全長(mm)と体重(g)を測定し、原則として採集地点へ再放流した。各河川の調査範囲の中間点において、データロガー型水温計(tidbitV2)を用いて毎正時の水温を連続観測した。稚魚(全長70mm未満)の出現量は河川間で大きく異なり(2014年4月に採集された稚魚:烏川380個体、伊東仲川149個体、伊東宮川18個体)、また、出現する月も年により異なった(伊東仲川:2014年4〜6月は計348個体<盛期が4月の149個体>、2015年1〜5月は計86個体<盛期が2月の28個体>)。河川間にて稚魚の採集数が異なる要因の一つとして、砂州や感潮区間の発達などの河口域の形状の違いがあると推察した。伊東仲川における調査と解析の結果、ニホンウナギは河川へ加入後、最下流の潮上帯に形成された水深10cm以浅の砂泥底に多く生息していた。よって、河川遡上後の稚魚の生息場所として、浅瀬の砂泥底が重要であると考えた。シラスウナギは3月からの水温上昇にあわせて9月もしくは10月までに全長130~140mmのクロコへ成長した。一方、低水温期である11月から2月は成長が停滞していた。2014年加入群は、8月まで最下流の潮上帯の砂泥底に偏在していたが、2014年9月には下流全域へ急速に分散した。同様に、2015年加入群も2015年7月に急速な分布拡大が確認できた。


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