| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-10  (Oral presentation)

大型ビオトープに自生する植物の種子発芽特性と光・気温への実生の生長反応 【B】
Flora of some large biotopes and seed germination traits and plant growth responses of seedling to  light and temperature conditions 【B】

*馬圓, 石川真一(群馬大学)
*Yuan MA, Shin-Ichi ISHIKAWA(Gunma Univ.)

 自然再生を目的として造成され育成管理されている大型ビオトープ(アドバンテスト・ビオトープ、チノー・ビオトープ、男井戸川調節池)において植物種モニタリング調査を約10-20年実施した。在来種はその半数が交代しながら、それぞれ180種、179種、135種程度で定常状態に達している。各ビオトープにはフジバカマ、コギシギシ、ミゾコウジュなど絶滅危惧種が自生している。これら確認された植物には、ビオトープの目標となるべき周辺の里地・里山の植物が多く含まれることから、植物種多様性が高い豊かな地域の自然が再生されつつある、生物の保護上重要性の高い地域であるといえる。
 発芽実験の結果より、フジバカマ、コギシギシ、ミゾコウジュの最大発芽率はそれぞれ46.7%、52.2%、76.1%となった。永続的な土壌シードバンクを形成しないため、生育中の個体群が何らかの壊滅的な影響を受けると、土壌シードバンクからの再生は望めず、自生個体の保全が最優先と考えられる。
 ビオトープ周辺に生育し緊急保護が必要な絶滅危惧種チョウジソウ、タチスミレの発芽率は17.8%、57.8%となった。冬を経験することと種皮の不透水性を解除する必要があると思われる。
 栽培実験の結果、フジバカマ、コギシギシ、ミゾコウジュは相対光量子密度13%以上の光環境でないと良好な生長ができないことから、生育中の個体群の保全には、外来植物の除去や定期的な草刈が必須と考えられる。


日本生態学会