| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-11  (Oral presentation)

シナノザサ開花地における5年間の稈齢構成の変化
Changes in culm age structure of five years in flowering sites of Sasa senanensis

*鈴木重雄(駒澤大学)
*Shigeo SUZUKI(Komazawa Univ.)

シナノザサ(Sasa senanensis (Franch. et Sav.) Rehder)を含むササ属の稈の動態については、観測が長期に及ぶことから調査事例が少なく、この結果、未解明な点も多いといえる。筆者は、2013年に開花した開花地を含む林床において、稈動態の継続調査を行っており、この中で、これまで1~2年とされているシナノザサの稈の寿命がより長く、かつ稈による差が大きいことを確認した。
調査は、長野県松本市上高地の徳本峠登山道沿いにある土石流ローブ上のウラジロモミ林で実施し、ササの開花箇所4ヶ所を含む6ヶ所に1 m四方の方形区を設置し、毎年、方形区内の稈の記録を行ってきた。
開花稈は、ほぼ全てが開花した年のうちに枯死をしていた。また、開花箇所の方形区のうち2ヶ所では、花序のついていない稈についても74%がその年のうちに枯死していたものの、他の2方形区では、この値が17%と非開花箇所の19%と大きな差が見られなかった。本調査では、同所的に生えている全ての稈を調査対象としておりジェネット構造は無視して行っているため、開花後の枯死稈が少なかった2方形区には開花ジェネットと非開花ジェネットが混在していたと考えている。
開花後の枯死稈が少なかった2方形区と非開花箇所の方形区の稈の5年間の生残率は、それぞれ45%と42%であり、シナノザサの稈の寿命はこれまで1~2年とされているが、より長いことが想定される。稈径毎の生残年数の平均は、根際直径3 mm以下では2.3年であったのに対して、根際直径5 mmでは3.7年となり、稈径が太いほど生残年が伸びる傾向が見られた。当年生稈の稈径は、いずれの方形区でも調査3年目に最小になり、その後太くなっており、開花と非開花の間で大きな差は確認できなかった。


日本生態学会