| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-15  (Oral presentation)

樹高ー幹直径関係に及ぼす個体間の成長変異の影響 【B】
Effect of growth rate variation on the tree height vs. stem diameter allometry 【B】

*甲山隆司, 西村貴司(北海道大学)
*KOHYAMA TAKASHI, Takashi NISHIMURA(Hokkaido University)

森林樹木の樹高–幹直径 (H-D) アロメトリーは、森林の構造を特徴づけ、現存量蓄積、一次生産速度や、共存する樹種間の形態変異を解析するために広く用いられている。樹木の成長速度は、同種内でも大きな個体間変異を示す。しかし、成長速度の変異がH-Dアロメトリーとどのように関係し、生産速度の推定にどのような影響をもたらすかについては明らかでない。私たちは、森林永久調査区の追跡データから、樹種個体群のH-Dアロメトリーの個体変異が個体の成長とどのように関係しているか調べた。北海道東部の雄阿寒岳と遠音別岳のアカエゾマツとトドマツの二種が優占する原生林永久調査区の観測データを解析した。両森林に共通して、幹直径の成長がよい個体ほど、同じ幹直径での樹高が高い傾向を示した。また、アカエゾとトドマツの種間差を入れたH-Dアロメトリーより、幹直径成長依存性を入れたアロメトリーのほうが観測データをよりよく説明した。明らかになったH-Dアロメトリーの個体間変異は、おなじ個体群内で樹冠高の獲得を担う高成長個体と、樹冠の維持により空間専有を担う低成長個体の機能分化が生じていることを示唆する。アカエゾマツよりトドマツのほうがD成長速度の個体間変異が大きい傾向があった。林冠層に長期間優占するアカエゾマツより下層個体比率の高いトドマツのほうが、下層での個体間機能分化が大きいと考察した。H-Dアロメトリーの成長速度依存性を考慮することにより、個体成長による純一次生産速度をより正確に推定できることを指摘する。


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