| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-04  (Oral presentation)

ヒメミカヅキモにみられる多様なゲノムサイズと生殖様式の進化との関連
Massive genome size variation associated with mating system shifts in Closterium peracerosum-strigosum-littorale complex

*川口也和子(千葉大・理), 土金勇樹(千葉大・理), 田中啓介(農大・ゲノム解析セ), 太治輝昭(農大・バイオ), 豊田敦(国立遺伝学研究所), 西山智明(金沢大・学際セ), 関本弘之(日本女子大・理), 土松隆志(千葉大・理)
*Yawako W KAWAGUCHI(Chiba Univ. Sci.), Yuki TSUCHIKANE(Chiba Univ. Sci.), Keisuke TANAKA(NGRC), Teruaki TAJI(NODAI Biol.), Atsushi TOYODA(NIG), Tomoaki NISHIYAMA(Kanazawa Univ.), Hiroyuki SEKIMOTO(JWU Sci.), takashi TSUCHIMATSU(Chiba Univ. Sci.)

生殖様式の進化は進化生物学における中心的なテーマのひとつである。これまで、生殖様式の進化とゲノムの変化との関連については、二倍体多細胞生物である被子植物を用いた研究が主であり、一倍体単細胞生物における両者の関係性は未だほとんど明らかになっていない。本研究で用いる一倍体単細胞性藻類ヒメミカヅキモ(Closterium peracerosum-strigosum-littorale complex)には、+型と−型の異なる交配型同士でのみ接合可能なヘテロタリズム系統(他殖;以下、ヘテロ)と、同一クローン間の接合が可能なホモタリズム系統(自殖;以下、ホモ)が存在する。さらにこれまでの研究から、種内系統間で2倍以上の顕著なゲノムサイズ変異がみられることが分かっている。そこで本研究では、本種におけるゲノムサイズ変異を生み出した要因と、その生殖様式との関連を明らかにすることを目的とした。ゲノムサイズが大きく異なる4系統(ホモ2系統、ヘテロ2系統)のロングリードシークエンスデータに対し遺伝子情報を付加し、遺伝子のコピー数やその由来から、ゲノム構造及びゲノム構成を詳細に解析した。その結果、ゲノムサイズの変異はおおよそ全ゲノム重複と小規模な遺伝子欠失に起因することが明らかとなった。加えて、全ゲノム重複が検出された系統のうちヘテロ系統は同質倍数体である一方、ホモ系統はヘテロ2系統由来の異質倍数体であることが示された。さらにホモ系統では、由来の異なるサブゲノム間で同祖染色体対合が生じており、その頻度が染色体により異なることが示唆された。これらの結果から、ヒメミカヅキモ種内にみられるゲノムサイズ変異は、生殖様式とは関連しない頻繁かつ大規模なゲノム構造の変化に起因し、同祖染色体対合による組み換えも重要な役割を果たすことが示唆される。今後、同祖染色体対合の頻度とゲノム構造の変異量との関連を明らかにしていく予定である。


日本生態学会