| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-009  (Poster presentation)

オオセンチコガネの色彩型間における遺伝的・地理的分化
Genetic and geographic differentiation among color morphs in Phelotrupes auratus

*荒木祥文, 曽田貞滋(京都大学)
*Yoshifumi ARAKI, Teiji SOTA(Kyoto University)

近畿地方に生息するオオセンチコガネ(Phelotrupes auratus)の色彩は、大まかに分けると赤色型、緑色型、瑠璃色型のいずれかに地理特異的に固定されている。本研究ではP. auratusの色彩型と集団遺伝学的構造の関係性を明らかにするため、近畿地方の全28ヶ所でサンプリングを行い、RAD-seq(Restriction site-Associated DNA sequence)によって得た核DNAの配列情報を用いた集団遺伝学的構造解析、色彩型と遺伝子型の地域集団間における移行帯規模の推定、およびGWAS(Genome Wide Association Study)による色彩に関連したSNPの探索を実施した。

その結果、近畿地方のP. auratusは色彩型の地理的分布から4つの地域集団(湖西赤色型集団、湖東赤色型集団、緑色型集団、瑠璃色型集団)に分別された。湖西赤色型集団と緑色型集団の間では遺伝子型の移行帯と色彩型の移行帯が一致したが、瑠璃色型集団と緑色型集団の間では色彩の移行が明瞭であるにもかかわらず、遺伝的な差異を検出できなかった。また、湖東赤色型集団と緑色型集団の間では色彩型の移行帯は湖東赤色型集団の分布域のほぼ全体に及んでいたが、緑色型集団との遺伝的分化が見られたのは湖東赤色型集団のごく一部のみであった。一方で、GWASにより色彩と有意な相関を持つ複数のSNPが得られた。以上のことから、P. auratusの色彩型は遺伝的に決定されているものの、色彩型の地理的分化は必ずしも集団間の遺伝的分化を反映するものではなく、また色彩型の地理的分化は集団間の遺伝的分化で完全には説明できないことが示唆された。


日本生態学会