| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-021  (Poster presentation)

高知県室戸市におけるニホンザル加害群の環境利用
Habitat use by Japanese macaques (Macaca fuscata) in Muroto, Kochi Prefecture

*寺山佳奈, 加藤元海(高知大学・院・黒潮圏)
*Kana TERAYAMA, Motomi GENKAI-KATO(Kochi University)

ニホンザルによる農作物被害は高知県を含め全国で深刻な問題となっており、農地を利用するニホンザルの生態学的な情報は農作物被害の対策を講じるうえでも重要な情報となる。高知県室戸市佐喜浜町で捕獲されたメスの成獣1頭に発信機を装着し、農地を利用するニホンザル個体群の行動圏の変化を明らかにすることを目的とした。発信機を利用した追跡調査の期間は、2018年9月から2019年8月の12か月間とし、各月1日以上、日の出から日の入りまで1時間間隔でニホンザルの位置情報を求めた。位置情報をもとに最外郭法を用いて対象群の行動圏を推定した。加えて、調査地内に生息するニホンザルの採食物を調べるために、追跡調査中に確認された採食物を記録するとともに、調査地で捕殺された11個体の胃内容物を調べた。調査期間中12か月間の行動圏は10.2 km2であった。各月の行動圏については、秋期と春期に大きくなり、冬期と夏期には小さくなる傾向がみられた。行動圏が最も大きくなったのは9月の3.3 km2であり、最も小さくなったのは12月の0.5 km2であった。追跡調査中に観察されたニホンザルの採食物は、秋期や春期はハゼノキやヤマモモなどの森林内に分布するものであり、冬期や夏期は柑橘やイネなどの農作物であった。胃内容物から出現した品目は、春期にはヤマモモなどの果実が多く、夏期には農作物であるイネが多く出現した。これらのことから、本調査地に生息するニホンザルは餌資源の分布に影響を受けて行動圏を変化させている可能性が高い。


日本生態学会