| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-024  (Poster presentation)

録音モニタリングによる樹洞営巣性鳥類の繁殖ステージの評価と影響する景観要因
Evaluating breeding stages and its associated landscape factors of a cavity-nesting bird by sound recording monitoring

*井上遠(東京大学), 三浦雄大(中央大学), 大坂真希(東京大学), 吉田丈人(総合地球環境学研究所, 東京大学), 鷲谷いづみ(中央大学)
*Tohki INOUE(Univ. of Tokyo), Yudai MIURA(Chuo Univ.), Maki OHSAKA(Univ. of Tokyo), Takehito YOSHIDA(RIHN, Univ. of Tokyo), Izumi WASHITANI(Chuo Univ.)

自ら樹洞を形成することができず、既存の樹洞を利用して繁殖する二次樹洞営巣性鳥類は絶滅リスクが高いとされ、その保全のためには自然状態で繁殖に影響する景観要因を広域的に評価することが必要である。奄美大島の森林域におけるリュウキュウコノハズクの繁殖成功と、それに関わる要因を繁殖ステージごとに分析するために、代表的な地点50地点において、つがい形成期にあたる4月(雌雄の鳴き交わしと交尾の鳴き声)と巣外育雛期にあたる7月(巣立ちビナのbeggingの鳴き声)に録音モニタリングを行なった。録音地点50地点のうち、鳴き交わしは45地点で、交尾の鳴き声は28地点で、巣立ちビナの鳴き声は22地点で確認された。それぞれの鳴き声の確認/未確認を応答変数に、森林植生タイプ別の面積、林縁長、林縁長の二次項、市街地までの距離、交尾の確認/未確認(巣立ちビナのモデルのみ)を説明変数としてサイト占有モデルSingle season occupancy modelを作成した。成熟した常緑広葉樹林は鳴き交わし、交尾の出現確率に対して正の効果を、林縁長の二次項が交尾の出現確率に対して負の効果をもっていた。巣立ちビナの出現確率に対しては、交尾の確認/未確認が正の効果をもっていた。その他の要因の影響は認められなかった。成熟した常緑広葉樹林は営巣場所を提供することで、本種にとって重要な繁殖場所になっていることが示唆された。一方で、採餌場所となっていると考えられる林縁長とは負の効果をもっており、林道長は有意な効果をもっておらず、営巣場所と比べると採餌環境が繁殖成功におよぼす影響は小さいことが示唆された。


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