| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-037  (Poster presentation)

複雑細菌群集の時系列データを用いた群集動態の安定性評価
Evaluating community dynamics stability of microbiome time series data

*藤田博昭(京大生態研セ), 阿部真人(理研AIP), 山道真人(東大), 木庭啓介(京大生態研セ), 潮雅之(京大白眉, 京大生態研セ, JSTさきがけ), 鈴木健大(理研BRC), 東樹宏和(京大生態研セ, JSTさきがけ)
*Hiroaki FUJITA(CER, Kyoto Univ.), Masato ABE(RIKEN AIP), Masato YAMAMICHI(Univ. of Tokyo), Keisuke KOBA(CER, Kyoto Univ.), Masayuki USHIO(Hakubi Center, Kyoto Univ., CER, Kyoto Univ., JST PRESTO), Kenta SUZUKI(RIKEN BRC), Hirokazu TOJU(CER, Kyoto Univ., JST PRESTO)

群集動態の安定性を適切に評価できるようになることは、持続的な生態系の維持につながるため、重要な研究課題としてあげられる。また、微生物群集の安定性は、基礎的な生態学分野だけでなく、応用的な医学や農業、工業分野で重要となるため、特に注目されている。しかし、これまでの実証実験研究では、安定性指標は群集が安定状態にあることを前提してきたため、変動し続ける群集動態の評価には適切ではなかったと考えられる。
 本研究は、土壌細菌群集と淡水池細菌群集を、それぞれ3種の液体培地に接種した。それら6つの処理区を8個ずつ用意することで、多様性の異なる48の細菌群集を構築した。そして、細菌群集の110日間の連続サンプリングを行い、得られた時系列データから、群集動態の安定性を局所的に評価し、多様性と安定性の関係について考察した。古典的な安定性指標である変動係数(variability)や抵抗性(resistance)などは、常に変動し続ける生物群集に当てはめるのは不適切と考えられる。そこで、Energy landscape analysis を用いて安定状態を推定し、各安定状態に落ちる確率を安定性指標として用いた。
 長期の連続培養から、接種材料が異なっても群集は培地成分によって、群集組成を変えることが分かった。また、バイオインフォマティクス解析ソフトPICRUSt 2を用いて、遺伝子情報を割り当てることで、代謝経路の時間変動を推定したところ、代謝経路は培養期間内で大きく変動せずに、群集内で保存的であることが示唆された。また、種多様性が高いほど群集は不安定であることが示された。これは、種多様性が高い時、群集は複数の安定状態に落ちつくことができるためである。現在、このメカニズムの理解のために溶存態全窒素、全炭素を測定しており、その一部の結果も紹介する。


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