| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-046  (Poster presentation)

融雪期の氾濫原におけるプランクトン群集動態と密度規定要因の検証
Experimental verification of factors controlling plankton community dynamics in a snowmelt floodplain

*横井瑞士, 福島慶太郎, 宇野裕美(京都大学)
*Mizushi YOKOI, Keitaro FUKUSHIMA, Hiromi UNO(Kyoto Univ.)

氾濫原河川では、季節的な氾濫により河跡湖や湿地帯が形成される。こうした止水環境ではプランクトンが急激に増殖し、稚魚などの重要な餌資源となることが予想される。一般にプランクトン群集は捕食者によるトップダウン制御と栄養塩によるボトムアップ制御を受けることが知られているが、氾濫原における動態はほとんど調べられていない。そこで本研究では、魚の侵入する河跡湖と堆積物の豊富な湿地帯でのプランクトン群集の氾濫前後の動態を観測するとともに、その密度の差が魚と堆積物の有無により規定されていると仮説を立て、これを実験的に検証した。
北海道大学雨龍研究林内のブトカマベツ川において2019年5-6月の融雪氾濫期に、河跡湖内に50Lの容器を①無処理②腐葉土添加③ヤマメ稚魚導入④ヤチウグイ導入の4処理に分けて20個設置した。実験開始後、約5日おき5回にわけて採水し、プランクトン動態を調査した。動物プランクトンはケンミジンコを中心に種類・サイズクラスごとに計数し、植物プランクトン量はクロロフィルa濃度によって評価した。ヤマメやヤチウグイの導入区では無処理区に比べ、ケンミジンコ密度が魚の存在する実験外部と同程度まで減少し、植物プランクトンはピーク時で3倍程度に増加したが、溶存する無機態のNH4+,NO3-やPO43-の濃度には差がみられなかった。これに対して、腐葉土添加区ではPO43-の溶出がみられたものの、プランクトン密度には無処理区との差はあまりみられなかった。またヤマメ存在下ではワムシが増加するなど群集構成にも影響がみられた。
同時期に実施した同氾濫原の調査では、湿地帯において栄養塩濃度が高く、NO3-の低下、NH4+・PO43-の顕著な上昇が起こると、続いてプランクトンが増殖することが判明した。これは湿地の底泥が酸化還元状態に応じてNやPを放出することでボトムアップ効果を与えていることを示唆しており、堆積物と水の間の栄養塩交換なども含めた理解が必要である。


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