| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-063  (Poster presentation)

攻撃的捕食者に対するヤマアカガエル幼生の誘導防御
Inducible defenses against an offensive predator in the anuran tadpole, Rana ornativentris Werner.

*後藤俊矢(新潟大・農学部), 清水宏一郎(新潟大・農学部), 岸田治(北大・北方圏FSC), 阿部晴恵(新潟大・佐渡演習林)
*Toshiya GOTO(Niigata Univ.), Kouichirou SHIMIZU(Niigata Univ.), Osamu KISHIDA(Hokkaido Univ.,FSC), Harue ABE(Niigata Univ.,Sado)

 生物が環境条件に応じてその表現型を変化させる能力を表現型可塑性という。表現型可塑性を持つ生物として、北海道に生息するエゾサンショウウオの誘導攻撃と、それに対するエゾアカガエルの誘導防御の例が知られている。本研究では本州種であるヤマアカガエルとクロサンショウウオを用いて、(1)ヤマアカガエル幼生もクロサンショウウオ幼生存在下で誘導防御を示すのか、(2)大顎化クロサンショウウオ幼生、普通クロサンショウウオ幼生、捕食者無しの異なる3つの環境下で飼育したヤマアカガエル幼生の誘導防御に差があるのか、(3)卵塊間でヤマアカガエル幼生における誘導防御の発現率や発現量は異なるのか、の3点の検証を行った。
 2019年に新潟県佐渡市大佐渡地域および小佐渡地域、本州の新潟県十日町市の3つの地域でヤマアカガエルの卵塊採取を行い、孵化後14日経過した幼生(体長10mm程度)を実験に用いた。その後、ヤマアカガエル幼生50匹を、大顎化したクロサンショウウオ幼生1匹、通常のクロサンショウウオ幼生1匹、捕食者無し(コントロール)の異なる3つの飼育環境で7日間飼育する実験を、卵塊ごとに水槽を分けて行った。実験の結果、ヤマアカガエル幼生は大顎化クロサンショウウオ幼生の捕食行動に対し、頭高を高くする誘導防御反応を示した。しかし、普通クロサンショウウオ幼生は捕食行動を示さなかったため、ヤマアカガエル幼生の頭高はコントロールとの差はみられなかった。また、ヤマアカガエル幼生の誘導防御発現率・発現量は、地域間ではなく卵塊間の差が示された。エゾアカガエルでは同種内でも遺伝子集団の違いにより誘導防御の発現に差があることが明らかになっている。本研究でも遺伝的要因、または生息環境や母性効果による影響で卵塊間に差が生じたのではないかと考えられる。


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