| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-065  (Poster presentation)

3次元海底地形モデルを用いた海藻類と固着動物の生息適地比較 【B】
Comparison of the habitat suitability of macroalgaes and sessile organisms with 3D bathymetry 【B】

*神吉隆行, 中本健太, 早川淳, 北川貴士, 河村知彦(東大大海研)
*Takayuki KANKI, Kenta NAKAMOTO, Jun HAYAKAWA, Takashi KITAGAWA, Tomohiko KAWAMURA(AORI, the Univ. of Tokyo)

潮下帯岩礁に分布する海藻類や固着動物について,各種の生息に適した要因を明らかにすることで,藻場造成や護岸工事などの海底地形改変後に付着生物相がどのように変化するか、予測することが可能になると期待される.しかし,付着生物各種の分布に影響する要因として数cm スケールの地形形状との関連を検討した例は乏しい.
そこで、2018年11月,2019年4月および8月に、岩手県大槌湾の潮下帯岩礁において約3 m 四方の岩盤を5地点選定し,写真測量によって解像度5 cmの3次元海底地形モデルを構築した.また,撮影した写真から固着動物3種(マボヤ,サンカクフジツボ,ウズマキゴカイ類)と,海藻類4種(イソキリ,ヒライボ,アオサ類,ソゾ類)の出現位置を読み取り,3次元モデル上に記録した.3次元モデルより各地点の海底からの高さ,傾斜,方位(北向き度,東向き度,岸向き度),粗度を計算し、付着生物各種の分布との関連性を検討した.
マボヤとサンカクフジツボは,海底から約1 m 以上の高さで,かつ鉛直に近い急傾斜面に多く出現した.ウズマキゴカイ類は傾斜によらず海底から約1 m 以上高い面,イソキリは海底からの高さによらず緩傾斜面,ヒライボは高さや傾斜によらず岸向き面,アオサ類は約50 cm以上の高さの緩傾斜面,ソゾ類は傾斜によらず海底から約50 cm以上の面に出現した.
種によって出現条件は異なったが,いずれの付着生物種も共通して海底から高い位置にはよく出現した.このうちサンゴモ類2種は,海底から低い位置にも出現した.岩盤上部は,流れが強いため懸濁物食性の固着動物にとっては餌料が得やすく、海藻類にとっては良好な光条件下で,それぞれの生息・生育に適していると考えられた.一方,サンゴモ類は、光条件が悪い海底付近においても生育可能であると考えられた.固着動物,海藻類ともに共通した生息適地条件がある一方で,各種に特有の生息適地条件があることが示唆された.


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