| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-096  (Poster presentation)

ミジンコ(Daphnia pulex)の嗅覚は遺伝子型によって異なるのか
Is the olfactory response of Daphnia pulex different among genotypes?

*黒川麻伊, 占部城太郎(東北大学)
*Mai KUROKAWA, Jotaro URABE(Tohoku Univ.)

 小型水生生物、例えばミジンコ類の個体は他種や他個体を認識しているのだろうか?ミジンコ類では捕食者となる魚類が放出する化学物質(カイロモン)を検知することで形態を変化させるが、この事実は、水中の化学物質が他生物の存在を認識する手がかりになっていることを示している。しかし、生存に驚異となる捕食者を回避するには、捕食されにくい深層に移動したり、遊泳行動を変化させたりしたほうが被食回避として即効性がある。この場合、捕食者そのものが放出する、あるいは捕食を通じて放出される化学物質(匂い)は被食者には警報情報となる。警報情報を臭覚として受け取った個体は、普段はとらない行動、すなわち生存のための情動を伴った恐怖行動を取ることが多い。この恐怖行動は、被食回避に有用であり、一連の行動連鎖は、水生生物では魚類を中心にその神経機構が研究されている。では、上述したミジンコなどの無脊椎生物では、警報物質に対する行動、すなわち恐怖行動はあるのだろうか。また、ミジンコ類では形態の可塑性が同種での遺伝子型により異なるように、警報物質の検知能力や恐怖行動も遺伝子型により異なっているのだろうか。本研究ではこれら疑問を調べるため、国内で採集し継代飼育している Daphnia pulex(和名ミジンコ)の複数の遺伝子型を用い、捕食者(魚類など)が放出した化学物質を暴露した際の各遺伝子型個体の遊泳速度変化や行動パターンの違いを調べた。その結果について報告する。


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