| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-132  (Poster presentation)

なぜエライオソームサイズにばらつきがあるのか?
Causes of variations in elaiosome size in Corydalis ambigua

*久保美貴, 井田崇(奈良女子大学大学院)
*Miki KUBO, Takashi Y IDA(Nara Wemen's University)

エゾエンゴサクはアリ散布植物で,種子には脂質に富んだエライオソームをつける.エライオソームはアリにとっての餌となり,種子への誘引器官である.個体の種子生産が多いほど,種子が落下した時の親個体や兄弟種子間での競争を避けるために,アリ散布の必要性が高まることが予測される.そのため,送粉者活性の程度に応じて,アリへの誘引効果が変化するのではないかと考えられる.苫小牧研究林内に生息するエゾエンゴサクを用いて,個体の結果率(果実数/花数)を変動させることで送粉者活性を反映した人工授粉処理を行なった.授粉処理を行った個体が生産した種子のサイズ形質を測定した.その結果,結果率の増加に伴って,種子数は増加し,種子重は減少,エライオソーム重は増加した.次に,結果率の増加に伴うこれらの形質の変化が,アリ散布にどのような効果を与えるのかを種子散布実験により検証した.その結果,種子やエライオソームのサイズがアリへの誘引に及ぼす影響は確認されなかった.一方で,種子の数が多いほど持ち去り数は増加したが,持ち去り率は低下した.種子数の増加は,持ち出しに時間がかかる可能性が考えられる.これらより,結果率の増加に伴うエライオソームサイズの増加は確認されたが,それが短期間でのアリへの誘引効果を促進させることはなかった.しかしながら,エライオソームサイズを大きくすることは,その乾燥を防ぎ,アリへの誘引効果を長時間保つための工夫であると考えられる.


日本生態学会