| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-133  (Poster presentation)

種子散布を哺乳類に依存するオオウラジロノキの果実のフェノロジー
Fruit phenology of Malus tschonoskii that depends on mammals for seed dispersal

*齊藤茜, 林田光祐(山形大学・農)
*Akane SAITO, Mitsuhiro HAYASHIDA(Yamagata Univ.)

 動物の被食による種子散布に関する研究は鳥類を散布者とするものが多く、1980年代後半になり哺乳類の散布者としての役割が注目され始められたが、哺乳類のみに依存した種子散布戦略をとる樹種に関する研究は少ない。そこで、本研究では、大型の果実形態より哺乳類散布樹種と考えられるリンゴ属のオオウラジロノキを対象に、果実の成長・成熟・落下のフェノロジーと、落下した果実に対する中型哺乳類をはじめとする動物の採食等を調査し、オオウラジロノキの種子散布が哺乳類に依存しているのか検証することを目的とした。
 東北日本海側に位置する山形県鶴岡市の高館山自然休養林において調査を行った。2019年に結実が確認できた8個体を対象に、樹冠下に落下した果実を定期的に採取し、果実のサイズおよび含まれる種子数とその充実率を計測した。また、樹冠下に落下した果実の消失数と設置した自動撮影カメラで動物の行動を記録することで、動物による採食を調査した。
 果実の落下数は8月と10月にピークが見られ、多いものでは合計約17000個の果実が落下した。7月に落下した果実に含まれる種子はしいなの割合が高かったが、時期を追うにつれて充実率が高くなった。8月から9月にかけて果実サイズが最大となったが、8月に落下した果実はおよそ5割が甲虫目の幼虫によって果実内部や種子が食べられていた。夏期にはネズミ類による種子食が確認されたのみで、哺乳動物による果実の摂食は確認されなかったが、12月に入り中型哺乳類による摂食が増加した。発表では、果実の落下と種子の充実率・昆虫による内部の摂食との関係、および果実のフェノロジーと中型哺乳類の摂食時期との関係からオオウラジロノキの種子散布が哺乳類にどの程度依存しているのかを議論する。


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