| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PA-135  (Poster presentation)

エゾノギシギシの競争環境に基づいたコガタルリハムシの資源選択
Resource selection in Gastrophysa atrocyanea based on competitive environments in Rumex obtusifolius

*大崎晴菜, 山尾僚(弘前大学)
*Haruna OHSAKI, Akira YAMAWO(Hirosaki University)

植物間の競争は葉の化学的・物理的形質の可塑的変異をひきおこす。この葉の変異は、その植物を餌とする植食者の資源利用や局所的な分布にも影響すると考えられる。本研究では、エゾノギシギシ(以下、ギシギシ)とギシギシ属のスペシャリスト植食者であるコガタルリハムシ(以下、ハムシ)を対象として、植物の競争に伴う葉形質の変異が植食者の資源利用や分布に与える効果を検証した。野外におけるギシギシの生育密度とハムシの分布との関係を調べるために、野外のギシギシ個体群を対象に64m2以上のコドラートを設置し、ギシギシの生育密度とハムシの個体数を記録した。次に、ギシギシの競争環境が葉形質やハムシの資源利用に与える影響を調べるため、ギシギシを3つの競争環境(種内競争処理:隣に同種他個体を植える処理、種間競争処理:隣に他種植物を植える処理、コントロール処理:隣に何も植えない処理)で栽培し、葉形質と葉に対するハムシの嗜好性を評価した。最後に、競争環境の違いに伴う葉形質の違がハムシの分布を規定しうるのかを調べるため、ギシギシの密度と競争の有無を操作した環境にハムシを放し、分布を調査するメソコスム実験を行った。その結果、野外では、生育密度の高い環境のギシギシの葉は縮合タンニンの含有量が高く、より多くのハムシが分布していた。室内栽培実験では、種内競争処理のギシギシは他の処理よりも縮合タンニンの含有量が高くなり、ハムシにより選好された。メソコスム実験では、種内競争に曝されたギシギシ個体により多くのハムシが分布した。これらの結果から、ギシギシの種内競争による葉形質の変化がハムシの嗜好性、ひいては局所的な分布をも規定する要因となることが示された。植物の生育密度に基づいた植食者の分布の予測は古くから研究が取り組まれてきたが、それらの中には、植食者の資源量に対する応答と資源の質に対する応答が混在していると考えられた。


日本生態学会