| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PB-193  (Poster presentation)

照葉樹林の樹種多様性と地上部生産性の関係におけるスケール依存性
Scale dependency of tree diversity-aboveground productivity relationships in a temperate forest

*近藤駿太郎(横国・環情), 岡田慶一(横国・環情), 飯田佳子(森林総研), 新山馨(森林総研), 齊藤哲(森林総研・関西支所), 森章(横国・環情)
*Shuntaro KONDO(YNU), Keiich OKADA(YNU), Yoshiko IIDA(FFPRI), Kaoru NIIYAMA(FFPRI), Satoshi SAITO(FFPRI Kansai), Akira S MORI(YNU)

森林生態系は全陸地面積の約31%を覆っており、陸域生態系における炭素固定機能の大部分を担っている。これらの要素は、現在進行する気候変動を緩和する上で重要な役割を果たしている。
炭素固定機能をはじめとした森林の生態系機能に対する生物多様性の重要性が近年明らかにされつつある。生物が多様なほど、炭素固定や物質循環などの生態系の機能性が向上する。この正の関係性は、森林の樹種多様性と地上部生産性(AGP)の間でもしばしば観測されている。このメカニズムとして、相補性効果が挙げられる。生物種間の「ニッチの差異」や「正の相互作用」によって、多種系ほど群集全体の資源利用効率が大きくなり生態系機能が向上する。一方、この効果は資源を共有し合う空間・時間の中でのみ成立する。しかし、これまでの既存研究では個々の面積やタイムスパンで樹種多様性とAGPの関係が評価されており、時空間スケールの統一や検討はほとんどなされていない。以上をもとに本研究では、時空間スケールの変化が樹種多様性とAGPの関係に与える影響を検証する。
屋久島西部の照葉樹林内に設置された4ha長期観測区のデータを解析に供試した。同観測区では1996年から2019年まで3~7年間隔で毎木調査が行われている。0.01haを最小単位の群集と定義し、樹木種数とAGPを算出した。AGPは、胸高直径と材密度に基づいて各生存個体と新規個体の地上バイオマスを換算し、変化量として算出した。また、面積(空間スケール)と期間(時間スケール)を変化させ、各スケールでのAGPとその時間変化量を求めた。AGPを応答変数、種数を説明変数として得られた回帰係数(多様性効果)を、時空間スケールの間で比較した。本発表では、時空間スケールの変化が多様性効果にどのような影響を及ぼすかを議論する。


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