| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-219  (Poster presentation)

森林生態系への火山灰加入による施肥効果:火山灰加入量の異なるコナラ林の比較検証
Nutrient-addition effects of volcanic-ash deposition in forest: a comparative analysis using Q. serrata forests with variable amounts of volcanic-ash

*高木真由, 向井真那, 北山兼弘(京都大学・森林生態)
*Mayu TAKAGI, Mana MUKAI, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology)

火山灰由来の物質である活性Al・Feは化学的にリン酸を強く吸着するため、火山灰土壌はリン(P)欠乏を起こす土壌と考えられがちである。しかし森林生態系において火山灰土壌によるP欠乏の報告はなく、むしろ先行研究から栄養塩可給性が高い可能性が示唆されている。そこで本研究では、日本に広く分布するコナラ林を対象に、火山灰加入量の違いによる土壌の栄養塩動態の違い、また樹木への栄養塩可給性の違いを明らかにすることを目的とした。生葉中の栄養塩濃度は土壌栄養塩可給性に良く反映されるため、それぞれの森林における共通樹種コナラの生葉中の栄養塩濃度を比較することで、樹木への栄養塩可給性の違いを検証した。
調査地は日本の北緯35°前後のコナラを第一優占種とする森林で、火山灰の加入が多い4サイトと少ない4サイトの計8サイトを対象とした。2019年8月から9月に、各サイトで土壌を0-5、 5-15、 15-30cmの3層に分けて採取、また林冠に達しているコナラから生葉を採集した。それぞれのサンプルから、火山灰の加入量の指標となる土壌中活性Al・Fe濃度、土壌P画分濃度、無機態窒素濃度、交換態陽イオン濃度、生葉中のC、N、P濃度を測定した。
活性Al・Fe濃度は火山灰土壌で有意に高く、土壌中の栄養塩濃度もいずれも有意に火山灰土壌で大きくなった。これより火山灰の加入は、直接的、間接的に土壌中の窒素、P、交換態陽イオン濃度の増加をもたらすことが示された。また活性Al・Fe濃度と速効性P濃度の間に相関は見られなかったが、遅効性Pとは有意な正の相関が見られた。また、速効性Pや、遅効性P+有機態Pと生葉中のP濃度の間には有意な正の相関が見られた。これらの結果から、火山灰加入は、土壌のPプールを増大させ、遅効性Pから速効性Pへの溶解・脱離、有機態Pの無機化の移動量を大きくし、高い速効性P濃度を保つことで植物へのP可給性を増大させる施肥効果があるのではないかと考えられる。


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