| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-298  (Poster presentation)

エゾイソツツジとヒメイソツツジの繁殖をめぐる種間相互作用
Interspecific interactions in reproduction between Rhododendron diversipilosum and R. subarcticum

*塩谷悠希, 工藤岳(北海道大学)
*Yuki SHIOTANI, Gaku KUDO(Hokkaido University)

 北海道の高山帯では、近縁なエゾイソツツジ(以下エゾイソ)とヒメイソツツジ(以下ヒメイソ)が同所的に生育している場所がある。エゾイソは亜高山帯から高山帯にかけて広く分布し、ヒメイソは高山帯の風衝地にのみ生育するという特徴がある。本研究は、同所的に生育するエゾイソとヒメイソについて、種間の生態特性の違いと繁殖干渉の有無について検証することを目的とした。
 大雪山系の4山域で、各種の生態特性を解明するために(1)葉と枝の形態測定、(2)植被率調査、(3)開花フェノロジー調査を行った。また、繁殖干渉を検証するために、1山域で(4)受粉実験、(5)発芽試験、4山域で(6)周囲の異種花序密度と適応度の相関の解析を行った。また、実生サンプルを用いたフローサイトメトリーを行った。
 形態観察の結果、ヒメイソはエゾイソよりもLMAが大きく、葉寿命が長いことが判明した。植被率調査の結果、ハイマツとエゾイソの植被率に正の相関があったのに対し、ヒメイソの植被率は逆の傾向を示した。開花調査の結果、ヒメイソはエゾイソより約1週間早く開花が始まるが、両種の開花期は重複していることが判明した。受粉実験では、エゾイソの花粉をヒメイソに受粉させた場合は高い結実率を示すが、逆方向の受粉ではほとんど結実しなかった。そして種間交雑由来の種子は発芽能力がほとんどなかった。周囲の異種開花密度と結実成功の間に明瞭な傾向は見られなかったが、自然状態で得られた種子の発芽能力は、ヒメイソがエゾイソよりも低かった。フローサイトメトリーの結果、野外で3倍体雑種が生じていることが示された。
 以上の結果より、種間で非対称的な繁殖干渉が存在し、異種花粉の受粉の結果、ヒメイソのみ適応度が低下することが示された。また、種間ではある程度空間・時間的な分離が生じていたが、繁殖干渉の回避には不十分であり、野外でも種間交雑が起きている可能性が示された。


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