| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-315  (Poster presentation)

複数の温度条件の組み合わせがケナガシャジクモ卵胞子の発芽に及ぼす影響
Effect of combination of multiple temperature conditions on germination of Chara fibrosa subsp. benthamii oospore

*伊東樹明(東邦大学), 加藤将(新潟大学), 西廣淳(国立環境研究所, 東邦大学)
*Tatsuaki ITO(Toho Univ.), Shou KATO(Niigata Univ.), Jun NISHIHIRO(NIES, Toho Univ.)

車軸藻類は、全国的に減少・消滅している大型淡水藻類だが、その卵胞子は散布体バンクとして残存している可能性が示されている。発芽条件を解明すれば、散布体バンクによる効率的な再生が可能であると考えられるが、車軸藻類の卵胞子の発芽研究は世界的に少ない。本研究では、車軸藻類の発芽特性を明らかにすることを目的とし、植物の休眠・発芽に重要であることが知られている温度に着目した室内発芽実験を行った。
温帯の季節変化を模した高温-低温条件、および4℃から36℃にかけて徐々に温度を上昇/下降させる条件を検討した。また季節と水深の違いを模して12時間ごとに異なる温度を与える交代温度条件について多数の組み合わせを設定し、発芽率を比較した。さらに、光の影響を見るため、実験処理のそれぞれの温度で、明条件、暗条件を設定した。上記の各温度条件による実験期間を1回とし、同じ試料に継続して計3回の繰り返し処理(1・2・3段階)を行った。発芽率は、各段階が終わるごとに求めた。
1段階目の実験では、高い発芽率が見られなかった(最大発芽率4.5%)。冷処理後に1段階目と同じ処理を繰り返した2段階目では、(1段階目:20℃→10/30℃)→5℃→20℃→10/30℃および、(1段階目:20℃→25/35℃)→5℃→20℃→25/35℃の交代温度とした処理(ともに明条件)で、それぞれ92.5%と84%の高い発芽率が確認された。3段階目では、2段階目で得られた結果が他の試料にも反映されるか検討するため、2段階目で発芽率が高かった処理を除いた他の処理を全て5℃→20℃→10/30℃の処理に置くと、全体的に発芽率が上昇していた。
本研究で高い発芽率が確認された条件は、2回以上冬の低温(5℃程度)を経験した後、さらに春(20℃)を経験した後に高温を含む日変動のある温度条件を経験することで、発芽が促される傾向にあることがわかった。これは、夏~秋に卵胞子が散布され、1サイクルを越える季節を経験してから、水深の浅い水域で夏季に発芽する性質であると解釈できる。


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