| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-346  (Poster presentation)

ヒメツリガネゴケ変異体(cdka)の過重力応答
Hypergravity response in Physcomitrella patens mutant (cdka) 

*安田柚里(京都工芸繊維大学), 久米篤(九州大学), 森耀久(富山大学), 蒲池浩之(富山大学), 藤田知道(北海道大学), 半場祐子(京都工芸繊維大学)
*Yuri YASUDA(Kyoto Institute of Technology), Atsushi KUME(Kyushu Univ.), Akihisa MORI(University of Toyama), Hiroyuki KAMACHI(University of Toyama), Tomomichi HUJITA(Hokkaido Univ.), Yuko HANBA(Kyoto Institute of Technology)

植物は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を供給するため、人間の宇宙滞在にとって重要である。中でも小型なコケ植物は、宇宙環境の限られた空間で栽培する上で有利である。ヒメツリガネゴケを過重力条件下で栽培すると、葉緑体が肥大化し、光合成速度や成長量が増加することが報告されている。成長量が増加することから、過重力応答には細胞増殖が関わっていることが予想される。本研究では、過重力下でヒメツリガネゴケの重力応答メカニズムを探ることを目的とし、材料として、野生型(WT)および細胞周期制御に関わるサイクリン依存性キナーゼAの変異体cdka dko(cdka)を用いた。WTとcdkaとを富山大学の過重力栽培装置MK-3を用いて、1Gおよび10Gで、BCD培地、栽培温度23.3~27.7 ℃、光強度63 μmol m-2 s-1 で8週間栽培した。栽培後に成長評価、形態観察、光合成速度測定、炭素安定同位体測定を行い、植物体内CO2コンダクタンスを算出した。その結果、WTとは異なりcdkaは過重力条件下において茎葉体数が減少し、葉緑体が縮小し、面積あたりの光合成速度が低下することが分かった。光合成速度が低下したのは、葉緑体が縮小することで葉緑体への二酸化炭素の取り込みが制限されたためだと考えられる。また、茎葉体数の減少が光合成速度の低下に寄与している可能性も考えられる。さらに、過重力にのみ応答する因子もあったことから、CDKAが重力刺激に対する応答に関与していることが示唆された。今後、遺伝子解析を組み合わせることによってさらにコケ植物の重力応答に関わる因子を探ることが必要である。現在、国際宇宙ステーションで栽培したヒメツリガネゴケを解析中であり、過重力・微小重力に対するコケ植物の応答を探ることで、将来的に植物栽培システムの構築に貢献できることが期待できる。


日本生態学会