| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-360  (Poster presentation)

林冠ギャップにおける下層植生の生産特性
The leaf amount and characteristics of understory in canopy gaps.

*谷岡庸介(筑波大学), 蔡一涵(筑波大学), 北川徹(筑波大学), 井田秀行(信州大学), 廣田充(筑波大学)
*Yosuke TANIOKA(Tsukuba Univ.), Yihan CAI(Tsukuba Univ.), Toru KITAGAWA(Tsukuba Univ.), Hideyuki IDA(Shinshu Univ.), Mitsuru HIROTA(Tsukuba Univ.)

従来の森林における物質生産の研究では、下層植生はあまり重要視されていなかった。その理由の一つとして、一般的に下層植生は林冠木と比較してはるかに少ない光しか得られないということがある。しかしそれは林冠が閉鎖されている場所であり、ギャップであれば下層植生は林冠木と同等の光を得ることができる。そのためギャップの多い老齢林では下層植生は大きな割合を占めるのではないかと予想した。本研究の目的は老齢林にて下層植生の光量子量、葉面積、葉の生理特性を計測し、それらについてギャップ区と閉鎖林冠区で比較することとした。調査地には冷温帯のブナ老齢林(カヤの平ブナ林)を設定した。調査地内に半径5 mの調査区を林冠ギャップとそうでない場所を4地点ずつ設けた。光量子量を各調査区の中心にて4月下旬から10月下旬まで計測した。下層植生と林冠木の葉面積を比較するために調査区の中心で葉面積指数を高さ別(0 m, 5 m)に、5月から10月まで約一か月おきに計測した。また下層植生が持つ葉の生理特性をギャップとそうでない場所で比較するために調査区内の下層植生の葉のクロロフィル蛍光などの生理特性を計測した。結果として、調査区の光量子量は展葉と同時に下がり、落葉期までギャップの方が高かった。下層植生の葉面積はギャップのほうが年間を通して高かった。また下層植生の葉の生理特性は種によって傾向が異なった。例えばカエデ類は強光下での電子伝達速度が他の種と比較して高い傾向にあった。本研究から下層植生はギャップでは高い生産量を持っており、それは林冠に匹敵する量であることが予想される。


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