| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-384  (Poster presentation)

長野県上伊那地方中部における半自然草地の植物群落の特性および外来植物の侵入状況
Characteristics of plant communities on semi-natural grasslands and invasion of alien plant species in the central Kamiina district, Nagano Prefecture

*趙家卉(信州大学)
*Jiahui ZHAO(Shinshu Univ.)

 近年、オオキンケイギク等の外来植物が半自然草地へ侵入、定着、優占し、在来群落へ負の影響を与えることが、地域の生物多様性の保全や植生管理上での大きな問題となっている。そこで本研究では、上伊那地方中部における半自然草地群落の組成および構造、立地環境条件や外来植物との関係を明らかし、スズサイコ等の希少植物の保全策を検討することを目的とした。
 調査地は長野県上伊那郡中部に位置する南箕輪村の①畦畔地と伊那キャンパス内の②半自然草地とした。調査プロット(面積1㎡)は①畦畔地で22個、②半自然草地で50個を設定した。植生調査は植物社会学的手法を用いて各調査プロットの全出現種名を記録し、各種の被度、群度、植物高等を測定した。また同時に、相対光量子束密度および土壌硬度、土壌含水率を測定した。次に各調査プロットにおける相対積算優占度を被度百分率と植物高を用いて算出し、TWINSPAN解析を行った。
 調査地①畦畔地の外来植物率は37.9%で、調査地②半自然草地の16.1%より高かった。両調査地の外来植物率が大きく異なる原因としては立地環境の違いによると考えられた。調査地➀の畦畔地は道路と隣接しているが、調査地②の半自然草地は構内で、通常は人の出入りがないところに位置する。調査地②の群落型の土壌硬度と含水率は調査地①よりも高かった。調査地➀は法面の傾斜地のため排水性がよく、土壌硬度と含水率が低かったと考えられた。全プロットはTWINSPAN解析で7群落型に分割された。47種の構成種は8種群に分類された。次に、調査地①の年間の刈り取り回数は5回で、②よりも多かった。両調査地の立地環境と刈り取りの回数が異なるため、調査地➀は調査地②より攪乱を受けやすく、外来植物が侵入しやすいと考えられた。畦畔地での草原性植物の多様性の低下を防ぐためには、出現率の高い外来植物を抑制する植生管理の実施が重要と考えられた。


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