| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-385  (Poster presentation)

市民科学の類型と参加動機の関係 ―複数の市民科学プロジェクトの比較 ―
Relationships among types and motivations in citizen science ― comparison of several citizen science projects ―

*高田陽(明治大学大学院), 倉本宣(明治大学)
*Yo TAKADA(Grad. sch. Agric., Meiji Univ.), Noboru W KURAMOTO(School of Agric., Meiji Univ.)

市民科学における研究者と参加者の関係性が見直されており、社会に市民科学が定着するためにも参加者の意識や参加動機を理解することが重要視されている。しかし、市民科学への参加動機の研究は欧米地域のデータ収集にのみ関わる参加者を対象としたものが多く、市民と協働して運営される市民科学プロジェクトや、東アジア圏を対象とした研究は少ない。そこで本研究では、貢献型と呼ばれる、市民がデータ収集にのみ関わる市民科学プロジェクトと、協働型や独立型と呼ばれる、市民がテーマや調査の設計から考察や発表にも関わる市民科学プロジェクトを対象として、市民科学の類型による参加動機の比較を行った。
アンケート調査から、参加者の市民科学プロジェクトへの関わり方と参加動機を調査した結果、貢献型の市民科学プロジェクトでは、個人の利益や楽しさになることと同時に、調査目的への共感が重要な参加動機と示唆された。協働型や独立型の市民科学プロジェクトでは、まず、参加者が協力側と運営側の二つのパターンに分類された。協力側は、プロジェクトにおいて、データ収集など部分的に関わる人が多く、参加動機として、科学への貢献や環境保全などの課題解決といった目的を持っていた。運営側は、プロジェクトの全体に関わっており、参加動機では、地域の自然や野鳥に対する関心のみが高く、他の項目への関心は少なかった。これらから、データ収集などの部分的に関わる参加者は自分たちの活動の意義や社会への成果をより強く意識する傾向にあり、運営側になる市民は、科学のプロセスを用いて身の回りの自然について理解することを楽しむ傾向にあると示唆された。市民科学プロジェクトの類型に関わらず、データ収集に関わる人は目的や課題解決を重視する傾向が日本の特徴であった。


日本生態学会