| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-414  (Poster presentation)

高知県香美市におけるニホンジカの狩猟圧の空間分布について
Spatial distributions of hunting pressure of sika deer in Kami city Kochi Prefecture

*幸田将平, 比嘉基紀(高知大学)
*Shohei KOUDA, Motoki HIGA(Kochi Univ.)

近年の全国的なニホンジカ(Cervus nippon、以下シカと省略)の個体数増加は、農林業や植生に甚大な被害をもたらしている。鳥獣被害対策の実行のため、高知県においても2016年に第4期高知県第二種特定鳥獣(ニホンジカ)管理計画が策定・改定され、個体数管理を実施している。しかし、高知県は狩猟者の8割が50歳以上であり高齢化が進行している。そのため、今後の狩猟者減少や高齢化に備え捕獲効率をあげるための対策が必要である。捕獲効率をあげるためには、シカの個体数が少ない地域よりシカの個体数が多い地域での捕獲活動が望ましい。本研究では、狩猟圧の空間分布や捕獲場所の環境特性を明らかにするために、香美市の平成26年度捕獲記録を地理情報システム(Quantum GIS)で捕獲活動の実施場所(自然林・二次林、ササ原・草地、人工林、農地)と環境要因(植生、標高、車歩道からの距離、傾斜)を比較した。シカの捕獲場所は人工林や自然林・二次林が9割を占めており、低標高地では捕獲が少なく、標高1000m地点で全体の捕獲の9割を占めており標高1300m以上からほとんど捕獲されていなかった。また車道や歩道からの距離が近い場所での捕獲が多く、1000m以上離れたところではほとんど捕獲されていなかった。メスは、オスと比較して標高が高く車道と歩道からの距離が遠い場所での捕獲が多い傾向がみられた。低標高地での捕獲が少ない理由として住宅地や農地が多くそもそもシカがいないため猟が行われていないと考えられる。車道や歩道の距離が近い場所での捕獲が多くなった原因として、捕獲したシカの運搬やわなの架設が困難であるためと考えられる。現在、銃猟の狩猟者が減少しわな猟の狩猟者が増加傾向にあり、今後さらに車道や歩道からの距離に依存した捕獲活動が増えてくると考えられる。捕獲圧に偏りがある場合、高標高地などの捕獲圧の低い地域が個体数増加の補給源となりシカが増加する可能性がある。


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