| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-418  (Poster presentation)

ヴィクトリア湖畔における住血吸虫環境DNAの分布
Distribution of Schistosoma environmental DNA in Lake Victoria

*大澤亮介(神戸大・院・発達), 中村梨沙(長崎大・院・熱研), 二見恭子(長崎大・院・熱研), 板山朋聡(長崎大・院・工), 菊池美穂子(長崎大・院・熱研), Colins OUMA(Maseno Univ.), 濱野真二郎(長崎大・院・熱研), 源利文(神戸大・院・発達)
*Ryousuke OSAWA(Kobe Univ.), Risa NAKAMURA(Nagasaki Univ. (NEKKEN)), Kyoko FUTAMI(Nagasaki Univ. (NEKKEN)), Tomoaki ITAYAMA(Nagasaki Univ.), Mihoko KIKUCHI(Nagasaki Univ. (NEKKEN)), Colins OUMA(Maseno Univ.), Shinjiro HAMANO(Nagasaki Univ. (NEKKEN)), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

住血吸虫症は住血吸虫属のセルカリアが経皮感染することによって引き起こされる病気であり、世界で推定2億4080万人が治療を必要としている。住血吸虫症の感染をコントロールするため、広域にわたる住血吸虫伝播をモニタリングすることは非常に重要であるが、従来の方法では難しい。近年、住血吸虫の生息域を特定するためのツールである環境DNA分析手法が感染伝播状況の把握や伝播制御に向けた介入後の感染伝播状況のモニタリングに機能すると期待されている。しかし、マンソン住血吸虫の環境DNAを効率的に検出するための採水やろ過の条件は明らかにされていない。以上のことから本研究は熱帯の湿地帯における利用可能な環境DNA分析手法の確立を目的とした。まず水槽実験で、ろ過をする際の最適なフィルター孔径を調べるため、4種類の孔径のフィルター(10、3、0.8、0.4µm)を使用して連続ろ過を行い、サイズ分画を行った。次にケニアのヴィクトリア湖岸調査を行い、野外サンプルからマンソン住血吸虫の環境DNAの検出と野外で利用可能なろ過法の確立を試みた。その結果、野外で利用可能な濾過法はGF/D(2.7µm)でろ過する方法であった。翌年に二回目のケニア調査を行い、その結果に関して環境DNA検出結果とヒトの感染率、水温、pH、溶存酸素量、電気伝導率、濁度等の環境共変量を用いてマルチスケール占有モデルを適用し、サンプル中に入る確率の推定値を求め、野外で利用可能な採水法の確立を試みた。その結果、フィールドでの採水を3回繰り返すことで偽陰性率を5%以下にすることができること、すなわちマンソン住血吸虫の正確な環境DNA調査が可能であることが示唆された。今後この手法が、より広範囲の場所での調査による住血吸虫の感染地域特定に役立つと考えられる。


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