| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PC-424  (Poster presentation)

風倒後の倒木搬出が北方林の炭素収支に及ぼす影響―現在気候下でのシミュレーション―
The effects of salvage logging after windthrow on carbon balance in boreal forest ecosystems ―Simulation in the current climate―

*堀田亘(北大院・農), 森本淳子(北大院・農), 芳賀智宏(阪大院・工), 松井孝典(阪大院・工), 鈴木智之(東大・農・秩父演習林), 尾張敏章(東大・農・千葉演習林), 中村太士(北大院・農)
*Wataru HOTTA(Hokkaido University), Junko MORIMOTO(Hokkaido University), Chihiro HAGA(Osaka University), Takanori MATSUI(Osaka University), Satoshi SUZUKI(Univ. Tokyo Chichibu forest), Toshiaki OWARI(Univ. Tokyo Chiba forest), Futoshi NAKAMURA(Hokkaido University)

気候変動は森林の炭素収支に影響を及ぼすことが知られている。例えば気温上昇は森林の一次生産量や従属栄養呼吸量を増加させる。また、特に高緯度地域では風倒の頻度や強度が増加してきており、森林構造に影響を与えることで炭素収支等の様々な生態系機能にレジームシフトをもたらす可能性が指摘されている。森林は気候変動の主因であるCO2の吸収源として大きな役割を果たす。世界の森林の年間CO2吸収量は人為起源のCO2排出量の1/4~1/3にあたる。しかし、森林が風倒撹乱を受けるとCO2吸収能力が大幅に減少するほか、枯死木の増加によって従属栄養呼吸量が増加することでCO2シンクからCO2ソースへの転換が起こる。さらに、火災や虫害の発生防止、経済的損失の補填のために先進国でよく行われる風倒後の倒木搬出は、前生樹を破壊することで健全な更新を阻害し、森林がCO2ソースである期間を長期化させる可能性がある。一方、枯死木が除去されているため分解者の呼吸量増加は顕著ではなく、そのシステムは複雑である。このように気候変動と風倒撹乱、倒木搬出は森林の炭素収支に影響を及ぼす要因だが、倒木搬出が実際に炭素収支にどのくらい影響を及ぼすのか、気温上昇や風倒の頻度・強度の変化がそれにどのような影響を与えるかについては未解明である。
本研究では上記を明らかにする前段階として、現在気候下で風倒後の倒木搬出が北方林の炭素蓄積に及ぼす影響を評価するため、森林景観モデルLANDIS-IIを用いて100年間のシミュレーションを行なった。景観は東京大学北海道演習林の一部(350 ha)を対象とした。また、LANDIS-IIで北海道の森林遷移を表現するにあたり、倒木上更新とササ被陰による更新阻害の実装も合わせて行なった。本発表では倒木上更新とササ被陰による更新阻害の実装結果、並びにそれらを実装した上での、現在気候下における風倒後の倒木搬出が北方林の炭素蓄積に及ぼす影響について報告する。


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