| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-470  (Poster presentation)

マレーシア・サバ州の熱帯低地林における先駆種Neolamarckia属とMacaranga属の分布
The distribution of pioneer trees, Neolamarckia and Macaranga in tropical lowland secondary forests in Sabah, Malaysia

*延澤真実, 澤田佳美, 北山兼弘(京都大学)
*Mami NOBUSAWA, Yoshimi SAWADA, Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.)

近年多くの熱帯雨林において、土地転換や商業木材生産のために森林伐採が行われている。ボルネオ島の熱帯雨林では森林伐採圧の上昇に伴い極相種の密度が低下する一方で、先駆種の密度は増加することが示されている。その中でもいくつかの先駆種が劣化した森林の指標種として考えられているが、特に優占度が高いのがNeolamarckiaMacarangaの2属である。
従来、低地熱帯降雨林帯では、二次遷移は先駆種のMacarangaから極相種群に交代することで進行すると考えられてきた。しかし、Neolamarckia属(アカネ科の先駆種)がMacarangaに随伴する場合が多く、これらが二次遷移系列上でMacaranga属と相同の生態的地位を持つのかあるいは異なる地位にあるのかは明らかではなかった。そこで本研究は、マレーシア・サバ州の熱帯低地林において、MacarangaNeolamarckiaの遷移系列上での生態的地位の違いを明らかにすることを目的とした。
調査地はマレーシア・サバ州のデラマコット森林保護区とタンクラップ森林保護区で、どちらも混交フタバガキ林からなる熱帯低地林である。調査内容は植被率の把握と環境条件の測定で、計54地点で行った。まず、植被率の把握はドローンによる空撮・画像処理と目視による被度・群度把握の二つの方法を用いて行った。ドローン撮影は高度100mで行い、撮影した写真から作成したオルソ画像を使って対象樹木の植被率を算出した。また、目視による調査ではNeolamarckiaMacarangaShorea、林床植生の被度群度を記録し、出現種の優占程度を評価した。次に、植生に影響を与える可能性のある環境条件として、土壌含水率・土壌pH・斜面の傾斜度を測定した。
調査の結果得られたデータから、時空間傾度上での各属の分布を厳密にみるため、DCA解析を行った。DCA解析の結果、1軸と2軸どちらにおいてもNeolamarckia属とMacaranga属の分布モードに差がある傾向が示され、Neolamarckia 属樹種はMacaranga属樹種とは異なる生態的地位を持つことが明らかとなった。


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