| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-484  (Poster presentation)

人為改変された景観が腐肉食性昆虫相に与える影響:森林景観との比較から
Effect of human-modified landscape on carrion beetle assemblages (Silphidae and Coprophagous group of Scarabaeoidea)

*雫田享佐, 斎藤昌幸(山形大・農)
*Kyosuke SHIZUKUDA, Masayuki U SAITO(Yamagata Univ.)

動物遺体を餌資源として利用する甲虫類、その中でも特にシデムシ類、コガネムシ上科食糞群(糞虫)をまとめて腐肉食性甲虫という。腐肉食性甲虫は森林の質に敏感に反応することが報告されているが、森林以外の環境における影響評価の知見は不足している。本研究では森林景観とそれ以外の景観(市街地・農地景観)において腐肉食性甲虫相を調べ、各景観の群集構造とそれに影響する要因を明らかにすることを目的とした。
山形県鶴岡市において森林・農地・市街地景観の調査地をそれぞれ森林8サイト、農地6サイト、市街地6サイト設定した。2019年6月~10月に月1回ピットフォールトラップを用いて腐肉食性甲虫を採取し、種レベルまで同定した。環境要因として、各月の調査時に被度と見通し度の計測を行い、秋季に開空度と土壌硬度の計測を行った。サイト間の群集構造の違いは非計量的多次元尺度法(NMDS)により解析した。また、捕獲個体数の多かった種について、個体数と環境要因および周辺土地利用割合(農地率・市街地率)の関係を一般化線形混合モデル(GLMM)によって調べた。
調査全体を通して捕獲された腐肉食性甲虫の種数と個体数は農地・市街地景観より森林景観で多く、NMDSの結果から森林サイトとそれ以外のサイトで異なる群集構造を有することが明らかになった。本調査で捕獲個体数の多かった種はヨツボシモンシデムシ、センチコガネ、コブマルエンマコガネであった。この3種におけるGLMMの結果、市街地率が高い場所ではヨツボシモンシデムシが少なく、一方でコブマルエンマコガネは多かった。また、3種全てで夏季に開空度が小さい場所で個体数が多かったことから、これらの種はオープンな環境よりも閉鎖的な環境が重要であると示された。ただし、周辺土地利用割合との関係については種によって異なる結果が示され、景観によって遺体分解に寄与する種が異なることが示唆された。


日本生態学会