| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-PD-486  (Poster presentation)

深層学習による人の目に映る緑の定量的評価と共同体の心理特性との関連性分析
An analysis of relationship between green coverage ratio on street level quantified by deep learning and human community

*皆川まり(京都大学), 箕浦有希久(同志社大学), 伊勢武史(京都大学), 内田由紀子(京都大学)
*Mari MINAGAWA(Kyoto Univ.), Yukihisa MINOURA(Doshisha Univ.), Takeshi ISE(Kyoto Univ.), Yukiko UCHIDA(Kyoto Univ.)

都市緑地は都市環境に様々な利益をもたらしていることに加え、人々の心理状態・健康状態にも影響を与えることが知られている。しかし、人々が日常的に目にしている緑が心理に与える影響についての定量的な調査は、現時点では十分に行われていない。
このような調査を行うためには、人々が日常生活で目にする緑の定量化が必要であるが、フィールド調査や上空からの調査で視野を占める緑地の割合を定量化することは困難であった。そこで、近年注目されている深層学習を用いることで、人の目に映る地域景観を定量化することとした。深層学習では、自動的に複数の特徴を抽出して分類を行うため、これまでの研究では不可能であった緑色の人工物と植物の分類や、緑地の種類に応じた多クラスの分類も可能になると考えられる。
本研究では、福井県の4地域を対象に、路上を撮影した画像から深層学習を用いることで、樹木・草地・山地・人工物・空の5クラスについて、十分に高い精度で分類に成功した。これにより集落ごとに緑地割合を計測し、アンケート調査により得られた心理変数との回帰分析を行ったところ、樹木と草地の多い地域には集落内の関わりが大きくなることに起因した心理特性が、樹木と山地の多い地域では集落外との関わりが希薄になることに起因した心理特性が存在することが示唆された。
本研究では、深層学習を用いることで、地域景観の定量化を多クラスに対して効率的に高精度で行うことが可能になり、景観の定量的データを用いて、いくつかの心理特性との間に有意な相関が見られた。これにより、より漏れや誤差の少ない景観の調査が可能になると同時に、景観調査にかかるコストや時間が大幅に削減されることが期待できる。また、地域の景観と心理特性の関係を明らかにする研究や、地域の心理調査にかかるコストや時間を削減することに役立てられるのではないかと考えられる。


日本生態学会