| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-015  (Poster presentation)

送粉者と植食者を介した捕食者の植物への間接効果
Indirect effects of predators on plants through pollinators and herbivores

*川田尚平, 瀧本岳(東京大学)
*Shouhei KAWATA, Gaku TAKIMOTO(Tokyo Univ)

捕食者は被食者個体群密度や群集構造を決定する重要な決定要因である。捕食者は植食者を捕食することで植食者個体群密度を減少させ、植食者の餌である植物に正の密度介在型間接効果を与えうる。一方で、捕食者は植物の繁殖に重要な送粉者に影響を与えることで植物に間接効果を与えうる。例えば、捕食者のいる植物を送粉者が避けるという行動改変がもたらす負の形質介在型間接効果が報告されている。このように、捕食者は植物に対し植食者の捕食を介した正の密度介在型間接効果と送粉行動改変を介した負の形質介在型間接効果を与えうる。しかし、植食者と送粉者の両方を介した捕食者の間接効果を調べた研究は少ない。そこで本研究では、捕食者による送粉者行動改変を組み込んだ植物-植食者-捕食者の3栄養段階の数理モデルを構築し、解析した。捕食者による送粉者行動改変の効果は植物の種子生産量への影響を通じて植物個体群成長率に現れるものと仮定した。モデル解析の結果、捕食者による送粉者行動改変が植物の成長率に負の影響を与えていても、植物個体群密度に対する捕食者の正味の間接効果は正となっていた。捕食者による送粉行動改変を通じた植物成長率への負の影響が強いほど正味の間接効果はゼロに近づいたが、負に転じることはなかった。この結果は、送粉者を介した負の形質介在型間接効果は、植食者を介した正の密度介在型間接効果よりも弱いことを示唆している。


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