| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-034  (Poster presentation)

環境DNAの放出量はどのような生理学的要因と関連するか? 【B】
What physiological factors does the shedding of environmental DNA associate? 【B】

*徐寿明(神戸大 院 発達, 学振 特研 DC1), 村上弘章(京都大 フィー研 舞鶴), 益田玲爾(京都大 フィー研 舞鶴), 源利文(神戸大 院 発達)
*Toshiaki JO(Kobe Univ., JSPS Research Fellow DC1), Hiroaki MURAKAMI(Kyoto Univ.), Reiji MASUDA(Kyoto Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

環境DNA分析により、従来法よりも非侵襲的かつコスト効率的な生物モニタリングが可能になりつつある。しかしながら、これまでの環境DNA分析では、生物種の分布および組成しか推測できず、個体群の発達段階や栄養状態など、より生理生態学的な情報を環境サンプルから推測することには限界があった。本研究では、水中のマアジ (Trachurus japonicus) 核およびミトコンドリアDNA放出量の比率と、それらの齢構成との関係性について調べた。異なる体サイズ区 (Small、Medium、Large) の水槽を設置し、マアジを1週間馴致させた。採取された水槽水中のマアジ環境DNA濃度を、核 (ITS1およびParvalbumin) およびミトコンドリア (CytB) DNAマーカーを用いたリアルタイムPCRにより測定した。その結果、水サンプル中の核に対するミトコンドリアDNA濃度の比率は、当歳魚で構成されるSmallおよびMedium区に対して、一歳魚で構成されるLarge区で有意に減少した。次に、このDNA濃度比と体サイズの関係がマアジ生体内においても成立するかを検証した結果、表皮サンプルにおいて負の相関が見られた。この結果から、体サイズの増加あるいは加齢に伴う細胞内のミトコンドリア密度およびDNAコピー数の減少が、生体内だけでなく、水中においてもある程度維持されている可能性が示唆される。本研究は、複数のDNAマーカーを組み合わせることで、個体群の年級群および成長段階を水サンプルから推定できる可能性を示した。


日本生態学会