| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-037  (Poster presentation)

アリモドキゾウムシ の構造色多型に関する研究
Structural color polymorphism in sweet potato weevil

*熊野了州(帯広畜産大学), 鶴井香織(琉球大学), 吉岡伸也(東京理科大学)
*Norikuni KUMANO(Obihiro Univ.), Kaori TSURUI(Ryukyus Univ.), Shinya YOSHIOKA(Tokyo University of Science)

構造色とはそれ自体には色は持たないものの,光の波長あるいはそれ以下の微細構造により発色する現象で,光の干渉や回折,散乱等の物理現象が発色に関係する.構造色は魚・鳥・貝・昆虫など,幅広い分類群で見られる.昆虫の中でも甲虫目で構造色は多く知られ,近年,生物模倣科学が注目されることで,物理・工学分野で基礎・応用研究が進みつつある.一方で,生物学的側面の理解には対象生物のサンプリングや飼育実験などが不可欠になるが,こうした条件を満たず材料に乏しい.本研究では構造色多型の理解を目的に,鞘翅に青~緑~赤の構造色色彩多型を持つ,サツマイモの世界的な害虫で,インド〜アフリカを原産とする体長約6mmのアリモドキゾウムシCylas formicariusを用い,コウチュウ目に普遍的に見られる,構造色多型の遺伝メカニズムの解明を目指す.実験では,選抜で確立された色彩系統間の交配実験を行い,親と得られた次世代の形質を,反射スペクトル(380~780 nm)とヒトの視覚に基づくLab色空間(明度,赤/緑,黄/青)により定量化し比較した.その結果,子世代のピーク波長は両親のピーク波長平均に比べ短波長にシフトした.ヒトはこうした現象を,子世代が波長の短い親に類似し,赤/緑という形質がよく遺伝するものとして視覚的に捉えていることをLab値解析は示した.発表ではこれらの結果を踏まえ,構造色の色彩多型について議論する.


日本生態学会