| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-040  (Poster presentation)

酸化ストレス測定によるウミネコの移動コストの評価
Evaluation of the movement cost of the black-tailed gull by the oxidative stress measurement.

*水谷友一, 鈴木宏和, 依田憲(名古屋大学大学院)
*Mizutani YUICHI, Hirokazu SUZUKI, Ken YODA(Nagoya University)

 近年、動物の行動研究はバイオロギング技術の発展で、より定量的に詳細な行動記録が可能となり一段と進歩してきている。特に採餌行動追跡について、採餌戦略の解明に向けたバイオロギングによる野外検証研究が盛んである。中でも雑食性のカモメ科のウミネコLarus crassirostrisの採餌旅行には、繁殖地から近く安定的に餌獲得が見込める“内陸型”と、繁殖地から遠方の海洋で餌探索をする“海洋型”があることがわかっており、年齢によって内陸型に傾向することが示唆されている。これら行動の違いは生理的負荷として影響しているのだろうか。本研究では、バイオロギングによる行動記録と生理的負荷を測定して、採餌行動の違いによる生理学的コストを評価し、その関係を検証した。生理学的コスト評価には、近年ヒトで酸化ストレスの臨床的有用性を示されている酸化能力 (d-ROMs)と抗酸化力 (BAP)を用いた。
 青森県八戸市蕪島で繁殖しているウミネコを対象に、繁殖中のウミネコ親鳥を捕獲してGPS・加速度ロガーを装着し、4–42日間の行動データを取得し、ロガーの装着と回収の捕獲時には採血を行った。採集した血漿成分からd-ROMs値とBAP値を、2018年は20個体、2019年は27個体の装着・回収の2回測定した。2年間の結果、BAP値は有意差がなかったが、d-ROM値は2018年が2019年よりも高かった。一方で、採餌行動に関わるパラメータと酸化ストレスは2年間とも関係がなかった。個体ごとに利用した場所や場所ごとに要した飛翔時間等の情報と個体内のd-ROMs値とBAP値の期間中変化の関係を検証する。


日本生態学会