| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-054  (Poster presentation)

スズメ目鳥類における卵表面の撥水性
Water repellency on eggshell surfaces in passerine birds

*松井晋, 菊池彩加, 梶田雅人, 竹中万紀子, 佐藤敦(東海大学生物学科)
*Shin MATSUI, Ayaka KIKUCHI, Masato KAJITA, Makiko TAKENAKA, Atsushi SATOH(Tokai Univ.)

鳥類の卵表面の構造は細菌などが卵内に侵入することを防ぐ重要な役割を担っており,卵表面の撥水性は細菌の増殖を抑制する効果をもつことが知られている.鳥類は一般的に産卵期に1日から数日おきに1卵ずつ産卵し,1回の繁殖で複数の卵を産む種はすべての卵が産卵された後,もしくはその数日前から完全抱卵を開始させる.このため一腹卵数が多い種ほど産卵期に卵が抱卵されずに巣に放置される状態が長く続き,卵表面の撥水性を高めて細菌の増殖を防ぐ利点が大きいと考えられる.そこで本研究ではスズメ目鳥類のシジュウカラParus minor,ヤマガラP.varius,ヒガラPeriparus ater,スズメPasser montanusを対象に卵表面の撥水性を種間で比較した.各種の回収卵をアセトンに5分2回浸して表面の脂質を含む付着物を除去した後,卵の赤道部に位置する任意の5点で撥水性を示す接触角を測定した.卵表面の撥水性はヒガラ,シジュウカラ,スズメ,ヤマガラの順に高く,これら4種で有意な差がみられた.一腹卵数の多いヒガラ(平均一腹卵数9.8卵)やシジュウカラ(8.1卵)は、スズメ(5.3卵)やヤマガラ(5.5卵)と比べて卵表面の撥水性が高い傾向がみられたことから,細菌感染リスクは鳥類の卵表面の撥水性を高める進化を促進させる可能性がある.


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