| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-115  (Poster presentation)

PRI(光化学反射指数)とNPQの関係の種間差とその補正法の検討 【B】
Examination of interspecific difference of PRI (Photochemical Reflectance Index) and NPQ and its correction method 【B】

*中村由紀子(東北大学大学院), 辻本克斗(東北大学大学院), 小川哲(ソニーIP&S㈱), 野田響(国立環境研究所), 彦坂幸毅(東北大学大学院)
*Yukiko NAKAMURA(Grad. Sch. Tohoku Univ.), Katsuto TSUJIMOTO(Grad. Sch. Tohoku Univ.), Tetsu OGAWA(SONY IP&S), Hibiki NODA(National Inst. Environ. Sci.), Kouki HIKOSAKA(Grad. Sch. Tohoku Univ.)

広域の生態系機能を評価するために、リモートセンシングによって植物の光合成速度やストレス状況を推定することが期待されている。光化学反射指標PRI(photochemical reflectance index)は531nmの反射率を利用した指標で、LUE(吸収光あたり光合成速度)や、植物のストレス状況を表すNPQ(non-photochemical quenching、熱放散)と相関があり、PRIから植生光合成を推定できると注目されている。しかし、LUEとPRIの関係は植生間で大きく異なるため、PRI単独で植生光合成を高精度で予測することは難しいと考えられている。
NPQとPRIの間に相関がある理由は、531nmの反射率がキサントフィルの変換を反映していることと、キサントフィルの変換がNPQに関与しているからであると考えられている。NPQとキサントフィルの関係は陸上植物において普遍的な関係であるが、531nmの反射率にはキサントフィル以外の色素も関与する。したがって、NPQ-PRI関係の傾きは普遍的だが、切片つまりNPQがゼロの場合のPRI(PRI0)が異なると考えられている。そこで本研究では、植生光合成推定のツールとしてPRIを利用可能にすることを目指し、PRI0を推定できる反射分光指標を探し、推定NPQを求める方法および補正方法の検証を行った。
実験には、24種の植物(草本15種、木本9品種)を使用し、Fv/Fm、反射分光、Chl(クロロフィル)、Car(カロテノイド)含量測定を行った。PRI0とChl、Carに関連する14指標で相関があったが(r2>0.4)、PRI0とChl、Car含量の間に相関はなく、Chl、Car以外の要因がPRI0に影響していることが示唆された。さらに選抜した13種(草本6種、木本7種)を様々な光強度にさらし、クロロフィル蛍光、反射分光測定を行った。得られた反射分光指数からPRI0を推定し、さらに推定されたPRI0を使って推定したNPQと実測したNPQの比較を行い、反射分光から算出されるNPQの精度を検証した。推定されたNPQと実測したNPQの間には有意な相関が認められ、本研究のアプローチが有効であることが示唆された。


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