| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-127  (Poster presentation)

気候変動が日本のスギ林生態系の炭素循環に及ぼす影響
The effect of climate change on carbon cycle of Japanese cedar ecosystem in Japan

*斎藤琢(岐阜大・流域研), 澤野真治(森林研究・整備機構), 安江恒(信州大学・山岳研)
*Taku M. SAITOH(RBRC, Gifu Univ.), Shinji SAWANO(For. Res. Manage. Organization), Koh YASUE(IMS, Shinshu Univ.)

スギが優占する常緑針葉樹林は、日本の森林面積の18%程度を占める。このため、スギ林における炭素循環の現状診断と将来予測が、日本の森林生態系の炭素固定能の長期変動を知る基礎情報となる。そこで、本研究では、東北から九州までを縦断する異なる気候帯におけるスギ林生態系炭素循環の温暖化に対する感度を生態系モデリングにより明らかにする。岐阜県高山市の常緑針葉樹林サイトのフラックス観測値(2006-2010)を用いて検証された生態系モデルを利用し、温量指数が異なる全国12地点(沖縄、鹿児島、宮崎、長崎、静岡、福岡、茨城、栃木、香川、愛媛、岐阜、福島)を対象に温暖化に伴う炭素収支変動に関する検討を行った。生態系モデルへ入力する現在および将来の気象値は、次のように推定した。まず、農研機構1kmメッシュ気象データ(日別値)と近隣アメダスの気象値(時別値)をもとに、1990年から2016年までの27年間の各気象値(気温、降水量、日射量、水蒸気圧、大気圧、風速)の時別値を推定した。さらに、将来予測値データ(MIROC5;PCP2.6およびHistorical)を利用し、RCO2.6およびHistoricalの各気象要素の差または比を1990年から2016年までの27年間の各気象値(気温、降水量、日射量)の時別値に上乗せする形の差分法により、将来気候(2070-2096,RCP2.6シナリオ)における時別値の気象データの整備を行った。これらの現在および将来の気象データを生態系モデルに入力し、炭素収支の現在値と将来予測値を比較した。その結果、温暖化に伴い、冷温帯地域では純一次生産量がほとんど変わらない一方で、暖温帯地域では純一次生産量が低下し、温暖な地域ほど気候変動の影響が顕著である傾向が見いだされた。


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