| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PA-144  (Poster presentation)

マングローブ堆積物からの溶存鉄溶出におけるマクロベントスの生態学的役割
Ecological roles of macrobenthos in dissolved iron elution from mangrove sediments.

*檜谷昂, 浅倉康裕, 中西康博(東京農業大学)
*Ko HINOKIDANI, Yasuhiro ASAKURA, Yasuhiro NAKANISHI(Tokyo Univ. of Agri.)

鉄は植物の成長に不可欠な元素であるものの、海水中におけるFe(III)の溶解度は極めて低く、海洋性植物プランクトンの生育を制限しやすい。このことから、陸から海への鉄供給に対する関心は年々高まりつつある。熱帯および亜熱帯地域の陸海境界(潮間帯)にはマングローブ生態系が成立し、そこには多種多様な生物が生息し、周辺水域は高い一次生産性を有している。この高い基礎生産力を担保するものとして、マングローブ生態系が沿岸水域の重要な鉄供給源となっている可能性が近年指摘されている。そこで演者らは、マングローブ林床堆積物における可給性鉄(溶存鉄)の生成・溶出メカニズムに焦点を当てた研究をこれまでに行ってきた。この中で、マングローブ植物体中に豊富に含まれるタンニンなどのポリフェノール化合物が堆積物中の不溶態鉄を可溶化(有機錯体の形成)させ、そのプロセスにはマングローブリターを直接消費する底生動物(マクロベントス)の関与が極めて重要であることがわかってきた。例えば、ベンケイガニ類によるマングローブ落葉の巣穴への持ち去り行為や、落葉食巻貝のキバウミニナによる落葉消費は、リターから浸出するポリフェノール化合物と堆積物中の鉄との接触・反応機会を増大させる他、それらベントス類の糞便中に残存するポリフェノール化合物と堆積物との接触・反応によっても溶存鉄が生成することなど明らかにした。本発表では、これらマングローブリターを消費するマクロベントスの溶存鉄生成・溶出メカニズムに果たす役割について報告する。


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