| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-169  (Poster presentation)

沖縄島におけるケナガネズミ個体群の遺伝構造
Population genetic structure of  Ryukyu long-furred rat Diplothrix legata in Okinawa Island

佐々木翔哉(岩手県立大学), *大西尚樹(森林総合研究所), 加藤珠理(森林総合研究所), 内山憲太郎(森林総合研究所)
Shoya SASAKI(Iwate Prefe. Univ.), *Naoki OHNISHI(FFPRI), Shuri KATO(FFPRI), Kentaro UCHIYAMA(FFPRI)

ケナガネズミ(Diplothrix legata)は沖縄島北部、奄美大島および徳之島にのみ生息する日本固有種であり、国内最大の齧歯類である。沖縄島北部(やんばる)では、20世紀前半に放逐されたフイリマングースにより在来希少種の個体数が減少した。近年、マングースの駆除が進み、希少種の個体数が回復傾向にある。ケナガネズミもこれらと同様にマングースによる個体数の減少と回復を経験していると考えられる。本研究では、沖縄島やんばる個体群における過去の個体数の減少による遺伝的多様性の損失の有無と分集団化の影響を明らかにすることを目的とし、マイクロサテライトDNAマーカーを用いて同種の遺伝的多様性および遺伝構造を明らかにした。沖縄島のケナガネズミのDNAから、マイクロサテライトDNA領域10遺伝子座のPCR用プライマーを開発した。このプライマーを用いて、やんばる地区で2000~2018年に交通事故等で死亡した個体の筋肉からDNAを抽出し、62個体の遺伝子型を決定した。その結果、やんばる個体群のヘテロ接合度は0.59(期待値)、0.51(観察値)だった。これは、同じく島嶼性の小型哺乳類である奄美大島のアマミノクロウサギの安定的個体群(0.54、0.40)よりも高い値だった。また、ボトルネックテストの結果、過去数世代で過度なボトルネックを経験していないことが示唆された。STRUCTRUE解析の結果、推定される集団はK=1であり、分集団構造は見られなかった。一方、距離による隔離の効果は見られ、やんばる個体群は遺伝的な平衡状態が維持されていることが示唆された。以上の結果から、ケナガネズミの遺伝的多様性および遺伝構造はマングースの影響をほとんど受けておらず、遺伝的に健全な状態が維持されていると考えられる。


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