| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PB-176  (Poster presentation)

日本産ヒシ属植物の系統地理に関する研究
Phylogeographic study of the genus Trapa in Japan

*山岸洋貴(弘前大学), 片岡太郎(弘前大学), THILam Dinh(岩手連大), 石川隆二(弘前大学)
*Hiroki YAMAGISHI(Hirosaki Univ.), Tarou KATAOKA(Hirosaki Univ.), Lam Dinh THI(UGAS), Ryuji ISHIKAWA(Hirosaki Univ.)

ヒシ属植物は、一年生の浮葉植物で日本列島に広く分布する代表的な水生植物である。国内には在来3種(ヒシ、オニビシ、ヒメビシ)と移入種のトウビシが生育し、最も広く分布するヒシは、種子形態などに多様な種内変異が観察される。このヒシは、オニビシ、ヒメビシの種間交雑由来である可能性が指摘されていることから、多様な種内変異獲得には複雑な交雑過程を反映していることが推測された。代表的な水生植物であるヒシ属植物における種および集団成立過程を解明することは、日本列島における湖沼生態系の変遷を知る上でも重要である。またヒシ属植物は分類に関して未解決な問題が存在し、詳細な遺伝的考察も必要である。そこで本研究は、国内に生育する4種に注目し、日本列島におけるヒシ属植物の遺伝構造や系統関係を明らかにすることを目的とした。まず、葉緑体DNAの配列から主に挿入・欠失部位などを探索し、これらの変異情報を利用する遺伝マーカーを開発した。開発したマーカーのうち8つを利用し、得られた遺伝情報を解析したところ、4種は大きく3つのグループ(ヒメビシグループ、オニビシやトウビシ、さらに主に北海道東部に生育するヒシの混合グループ、北海道西部、一部を除く本州に生育するヒシのグループ)に分かれることが示された。この結果からヒシは日本列島において少なくとも2つの葉緑体タイプを持つ系統が存在することが示唆された。しかし、情報量が限られていたため、詳細な地域間の系統関係などを明らかにすることが出来なかった。そこで新たに、核DNAを含めた多くの遺伝情報を得ることができるMIG-seq法を用いた解析を進めている。現在までの結果では、国内の4種は大きく3つのグループ(ヒメビシ、オニビシ・トウビシ、ヒシ)に分かれることが示されており、また地理的な系統関係の解析から種内にいくつかの地域グループが存在することが示唆された。


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